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語尾１２－１．【否定表現】動詞・形容詞の「短い否定 안」について学ぶ。

＜これだけは＞

　（１）名詞の否定　

　　Ａ：학생입니까?（学生ですか）

　　Ｂ：아니요, 학생이 아닙니다.（学生ではありません）

　　上のように、「学生であることの否定」＝「学生ではありません」という表現については、「語尾３．【名詞＋ではありません】　名詞＋이/가 아닙니다/아닙니까について学ぶ」で詳しく説明してあります。

　　「学生ではない」「会社員ではない」「ここは、日本ではない」という『存在そのものの否定』は、「名詞+이/가 아니다」という文法表現が使われます。

　（２）有無における否定　

　　Ａ：여기에 일본 과자가 있습니까?（ここに日本のお菓子がありますか？）

　　Ｂ：아니요, 없습니다.（いいえ、ありません。）

　　上のように、「あるなし」を尋ねられた時、「ない」と答える場合は、「없다」を使います。

　（３）動詞・形容詞の否定　

　　名詞の否定：아니요, 학생이 아닙니다.（学生ではありません。　or　学生じゃないです。）

　　有無における否定：아니요, 없습니다.（いいえ、ありません。　or　ないです。）

　　動詞の否定：아니요, 안 갑니다./아니요, 가지 않습니다.（いいえ、行きません。　or　行かないです。）

　　形容詞の否定：아니요, 안 멉니다./아니요, 멀지 않습니다.（いいえ、遠くありません。 　or　遠くないです。）

　　日本語で否定文というと、「ありません」「ないです」が使われます。 しかし、「有るか無いかの『ありません』『ない』」と、「学生では『ありません』『ない』」という属性の否定で使われる「ありません」 「ないです」は意味が違います。また、有無、属性の否定と「行か『ない』」「遠く『ありません』『ない』」で使われる、「ありません」 「ないです」は、形は同一でも意味が違うということは理解して貰えると思います。

　このような否定の意味の違いは、韓国語ではっきりと形で表れます。韓国語で否定表現は、名詞なら「名詞+이/가 아니다（名詞+ではない）」、有無における否定なら「없다（ない）」、動詞・形容詞なら「短い否定　안」か「 長い否定　-지 않다」というように、明確に表現を区別する必要があります。

　 韓国語の動詞・形容詞の否定表現が「短い否定　안」「 長い否定　-지 않다」の二種類あるのは、使い分けが必要だからです。細かな使い分けについては 下段の＜もっと詳しく＞で詳しく説明します。まず最初に、作り方を説明しておきます。

　　（４）動詞・形容詞の「短い否定 안」の形

　　動詞・形容詞の否定表現の形は、動詞・形容詞の区別なくどちらも同じ形になります。さらに、パッチムの有無による違いによる形の違いもありません（短い否定안の時は、連音化や音韻変化が起こる場合があります 。表内の[ ]は発音を表します）。

「短い否定　안の形」

　短い否定の場合、動詞・形容詞の『前に』「안」を入れます。書く時は「안 하다」のように「안」と動詞・形容詞を離して書きます。否定の基本形のように、「안 만나다(会わ　ない)」「안 하다(しない)」という形では会話では使えないので、動詞・形容詞の形を丁寧な語尾の形「습니다体」か、「해요体」に変える必要がありますが、「습니다体」にするか、「해요体」にするはか、話す状況や相手によって変わってきます。「습니다体」と「해요体」の使い分けの説明は、「語尾５．【합니다/합니까】について学ぶ。」の＜さらに＞をご覧ください。

　少し細かい話をすると、この「안」というのは本来「아니」という形をしています。むかしは「안 하다（しない）」ではなく、「아니 하다（しない）」のような使い方をしていましたが、現在は「아니」の縮約形「안」という形になっています（ただし、古めかしい言葉遣いを現代でもすることがあり、書き言葉では「아니 하다」という書き方をすることがあります）。

（５）「否定が最初から使えない動詞・形容詞」

　否定文を作る際考慮しなければいけないのが、「短い否定　안」が使えない語彙があるという点です。例えば、日本語で「わかる」という単語は「わからない、わかりません」のように否定の形に変えられますが、韓国語は「わからない」という単語「모르다」が、単独で存在するので、「알다（わかる）」の否定は使えません。「있다（ある）」「없다（ない）」なども、肯定と否定がついになる単語が単独で存在するので「短い否定　안」は使えません。

　※しかし、「있지 않다」「없지 않다」「알지 않다」「모르지 않다」という「長い否定 -지 않다」の形にできます。これは、「短い否定　안」「長い否定 -지 않다」の意味が異なるのが原因ですが、詳しくは、「語尾１２－２．【否定表現】動詞・形容詞の「長い否定 지 않다について学ぶ」をご覧ください。

＜短い否定にできない語彙＞

＜語彙自体に否定の意味が含まれていればそのまま使えばいい＞

　「있다（ある）/없다（ない）」同様に、「맛있다（おいしい）／맛없다（おいしくない）」「재미있다（おもしろい）／재미없다（おもしろくない）」も対の単語があるので、「안」を使わない事が多いです。ただし、「안 맛있다（おいしくない）」は日常で使われています。また、「필요하다（必要だ）／필요 없다（必要じゃない）」に関して、「안 필요하다（必要じゃない）」「필요 없다（必要ない）」という表現が併存します（他にも「短い否定 안」が使いにくい単語には、견디다, 깨닫다があります）。

 ※しかし、「있다（いる）」の尊敬語「계시다（いらっしゃる）」に限っては、「계시다（いらっしゃる）」の対になる否定語彙がないため、「短い否定 안」が使える。

（５）「短い否定 안」の過去表現、尊敬表現

　「短い否定　안」でも「否定文の過去表現」「否定文の尊敬表現」「否定文の尊敬表現の過去 形」が同様に作れます。こちらは、「動詞・形容詞の前に안を付ける」という規則さえ守れていれば、そう複雑ではありません。

　・通常の否定文　　　　　　　　출장을 안 갑니다.（出張に行きません。）

　・過去の否定　　　　　　　　　출장을 안 갔습니다.（出張に行きませんでした。）

　・否定文の尊敬表現            사장님께서는 출장을 안 가십니다.（社長は出張に行かれません。）

　・否定文の尊敬表現の過去　　　사장님께서는 지난주 출장을 안 가셨습니다.（社長は先週出張に行かれませんでした。）

＜さらに＞

「短い否定　안」の注意点

　「短い否定　안」は、動詞・形容詞の『前に』「안」を入れるというのが原則です。そのため、「名詞+하다」「名詞+되다」の形を取る動詞の場合、注意が必要です。

　　例1．　공부하다（勉強する）　　　　　→　〇공부 안 하다（勉強しない）　　　　　  × 안 공부하다

　　例2．　쇼팽하다（ショッピングする）　→　〇쇼핑 안 하다（ショッピングしない）　　× 안 쇼핑하다

    例3．　이해되다（理解できる）　　　　→　〇이해 안 되다（理解できない）　　　　　× 안 이해되다

　　例4．　준비되다（準備できる）　　　　→　〇준비 안 되다（準備できない）　　　　　× 안 준비되다

「사랑하다（愛する）」のような一部動詞は、「안 사랑하다（愛さない）」という、　「短い否定　안」が可能です。구주첩（2017：17）によれば、このような二音節の「名詞+하다」動詞の中には、日常生活で使用頻度が高い物は使えても、使用頻度が低い単語は制約を受けるということです。

   ただし、「漢字一字+하다」の形を取る動詞の中には、「短い否定　안」が大抵使えます。「漢字一字+하다」の場合は逆に、「하다」の前に「안」を入れてはいけません。　

　　例5.　전하다（伝하다：伝える）　　　→　〇안 전하다（伝えない）　×전 안 하다

　　例6.　통하다（通하다：通じる）　　　→　〇안 통하다（通じない）　×통 안 하다

　　例7.　권하다（勧하다：勧める）　　　→　〇안 권하다（勧めない）　×권 안 하다

　　例8.　향하다（向하다：向かう）　　　→　〇안 향하다（向かわない）×향 안 하다

　 「하다」の形を取る形容詞（いわゆる하다形容詞）の場合も使えたり使えなかったりするものがあります。ただ、動詞よりは制約を受けない傾向があります。

　　例9.　신원하다（涼しい）　　　→　〇안 시원하다（涼しくない）

　　例10. 똑똑하다（賢い）　　　　→　〇안 똑똑하다（賢くない）

　　例11. 심심하다（退屈だ）　　　→　〇안 심심하다（退屈じゃない）

　　例12. 답답하다（窮屈だ／落ち着かない）　→　〇안 답답하다（窮屈じゃない）

　　例13. 착하다（善良だ）　→　〇안 착하다（善良じゃない）

　　「漢字+하다」の形であっても、割と自由に使えます。

　　例14. 부족하다（足りない）　　→　〇안 부족하다（足りなくない）

　　例15. 간단하다（簡単だ）　　　→　〇안 간단하다（簡単じゃない）

　　例16. 화려하다（派手だ）　　　→　〇안 화려하다（派手じゃない）

　　「漢字一字+하다」の場合も同じように、割と自由に使えます。

　　例17. 망하다（亡하다：滅ぶ）　　→　〇안 망하다（滅ばない）

　　例18. 독하다（毒하다：甚だしい）→　〇안 독하다（甚だしくない）

　　例19. 급하다（急하다：急だ）　　→　〇안 급하다（急じゃない）

　　例20. 약하다（弱하다：弱い）　　→　〇안 약하다（弱くない）

　　例21. 편하다（便하다：楽だ）　　→　〇안 편하다（楽じゃない）

　　例22. 친하다（親하다：親しい）　→　〇안 친하다（親しくない）

＜もっと詳しく＞

（１）「短い否定　안」が使えない例

　ただし使えないものもあります。使えない理由は、結局「韓国語ネイティブがあまり使わず、使っていると変に感じる」ということのようです。 使えない理由が不明瞭なために、「韓国語ネイティブ」の中には、「違和感がない」と答える人もいるかもしれません。

   「短い否定　안」が使えない場合は、「長い否定 -지 않다」を使って否定にします。

　　例20. 정확하다（正確하다：正確だ）　　→　×안 정확하다　　　〇정확하지 않다(正確じゃない)

　　例21. 무정하다（無情하다：無情だ）　　→　×안 무정하다　　　〇무정하지 않다（無情じゃない）

　　例22. 구차하다（苟且하다：窮屈だ）　　→　×안 구차하다　　　〇구차하지 않다（窮屈じゃない）

　　例23. 선하다（善하다：善だ）　　→　×안 선하다　　　　　　 〇선하지 않다（善くない）

　　※その他「短い否定　안」が使えない とされる形容詞：엉뚱하다（でたらめだ）, 조용하다（静かだ）, 귀하다（尊い）,  추하다（醜い）, 엄하다（厳しい）, 능하다（慣れている）, (불)길하다（（不）吉だ）, 긴하다（緊要だ）, 박하다（薄情だ）, 궁하다（窮する）等。

　　ただし、接尾辞「답다」「롭다」「스럽다」が付いたものや、「맞다」「되다」「지다」が付いた形容詞は、ほぼ「短い否定　안」が使えません。 この場合も否定にしたいのであれば「長い否定 -지 않다」を使います。

　　例24. 아름답다（うつくしい）　　→　×안 아름답다   〇아름답지 않다（うつくしくない）

　　例25. 새롭다（新しい）　　　　　→　×안 새롭다　　〇새롭지 않다（新しくない）

　　例26. 걱정스럽다（心配だ）　　　→　×안 걱정스럽다　〇걱정스럽지 않다（心配じゃない）

　　例27. 쌀쌀맞다（冷淡だ）　　　　→　×안 쌀쌀맞다　　〇쌀쌀맞지 않다（冷淡じゃない）

　　例28. 참되다（真実だ）　　　　　→　×안 참되다　　〇참되지 않다（真実じゃない）

　　例29. 기름지다（脂っこい）　　　　→　×안 값지다　　〇기름지지 않다（脂っこくない）

　※その他「短い否定　안」が使えない 接辞が付いた形容詞には、당황스럽다, 자연스럽다, 자랑스럽다  학생답다, 남자답다, 여자답다, 정답다, 향기롭다, 슬기롭다, 신비롭다, 자유롭다, 풍요롭다, 방정맞다, 익살맞다, 청승맞다, 앙증맞다, 거짓되다, 어중되다, 숫되다, 막되다, 값지다, 세모지다, 새빨갛다, 새파랗다などがあります。詳しくは以下をご覧ください。

（２）「短い否定　안」と「長い否定 지 않다」 の違い

　逆に 「短い否定　안」が使えても、長い否定　-지 않다」が使えない例というのもあります。これは形の制約というわけではなく、 「長い否定　-지 않다」の意味上の制約のせいです。「長い否定　-지 않다」が使えない例の詳し い説明は、「語尾１２－２．【否定表現】動詞・形容詞の「長い否定 지 않다について学ぶ」＜さらに＞および＜もっと詳しく＞をご覧ください。

　ここでは形上の違いに付いて述べておきます。

　①그는 밥을 안 먹고 갔다.（彼はご飯を食べないで行った。）

　②그는 밥을 먹고 가지 않았다.（彼はご飯を食べて行かなかった。）

　①、②の解釈の方法はいくつかありますが、一番単純な解釈が①の「短い否定 안」が否定しているのは「먹다（食べる）」までで、「가다（行く）」ことについては否定しえていないという解釈です。つまり、「食べないで」「行った」というように二つの連続する動詞の「먹다（食べる）」だけを否定しているという解釈です。一方で、②の「長い否定 -지 않다」は、「먹다（たべる」または、「가다（行く）」のどちらとも否定している可能性があり、「食べないまま帰ったのか」のか、「食べたけど、帰らなかったのか」という二重の解釈が可能です。

「短い否定 안」は、動詞の前に付くので、後方にある動詞にまで影響が及びにくい性質があります。「長い否定 -지 않다」は、後方から文全体を否定するため、全ての動詞に影響を与える傾向があります。

　ただ、状況や抑揚によっては、①、②ともに「食べないまま帰った」「食べたけど、帰らなかった」のどちらにも解釈できるため、絶対的に「短い否定 안は直後の動詞や形容詞しか否定しない」というわけでもありませんし、「長い否定 -지 않다」は、文全体を否定できるというわけではありません。

　さらに①について、抑揚によっては以下のような解釈も可能です。

　・ご飯を食べなかったのは彼であった。（「그는（彼は）」に焦点を当てた場合）

　・彼はご飯ではなく、他の物を食べて行った（「밥을（ご飯を）に焦点を当てた場合）

　一概に、「短い否定 안」は直後の動詞・形容詞に影響が及び、「長い否定 -지 않다」は、文全体を否定するといった解釈ではよくないかもしれませんが、「短い否定 안は、前から否定する」「長い否定 -지 않다は後ろから否定する」という形上の違いは明確なので、否定できる範囲に違いがあるという解釈はそう間違っていないと思われます。

＜参考文献＞

구주첩(2017)「'-하다' 파생형용사의 '안' 단형부정 사용 경향성에 대한 연구 」건국대학교 대학원 국어국문학과 석사학위논문

박형우(2003),「‘아니’부정문 형성의 제약」『한국어문교육Vol.12』 한국교원대학교 한국어문교육연구소

심해란(2014)「‘-하다’파생어의 단형 부정 제약에 관한 고찰 -‘아니(안)’ 을 중심으로」『연구생론단』P53~59, 중앙민족 대학

고영근,구본관(2008)「우리말 문법론」집문당