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Ｄ－４３．音が複数あったり、日本の読みから想像できない漢字について整理する。

＜これだけは＞

（１）韓国語における「漢字」と「漢語」の関係

　　韓国語を書く時は「漢字」を使いませんが、韓国語では長い間、漢文を書き言葉としてきたため、漢字の単語＝漢語がたくさん存在します。ただ、漢語であっても漢字でかくわけではなく、全てハングル文字で表記するために、外国語として韓国語を勉強する人にとっては、どれが漢語で、どれが漢語ではないかの区別は難しくなっています。

　　日本語で例えれば、漢語を全てひらがなか、カタカナで書くようなものなので、特に同音異義語を区別する時に苦労します。

　　「カテイガタイセツダ」

　　日本語でもカタカナで書いてあると、「家庭が大切」なのか「過程が大切なのか」、はたまた「仮定が大切」なのかがわかりません 。しかし、私たちは言葉を理解する時、文脈から切り離して覚えるということはしませんよね。以下のような文脈が与えられていれば、意味を区別することが可能になります。

　・ワタシニトッテシゴトヨリ　カテイガタイセツダ（私にとって仕事より家庭が大切だ）

　・モノゴトハケッカヨリ　カテイガタイセツダ（物事は結果より過程が大切だ）

　・スイソクニハ　カテイガタイセツダ（推測には仮定が大切だ）

　「韓国は漢字を廃止してしまったから、漢語の意味を正確に理解できなくて、言葉を理解する範囲が狭くなっている」とか、「漢語はそもそも漢字で書くものなのに、韓国は漢字を廃止してしまったのは愚かだ」とかいう人がいるのですけど、言葉は文脈で理解するものである以上、漢語をハングルのみで書こうが問題がないのです。

※韓国では、漢字教育をしたほうがより国語（韓国語）を理解できるようになるので、漢字を教えたり、教科書にも漢字を併記したほうがいいという学者がいるのですが、「文字としての漢字を知っていることで理解度が深まった」「教科書に漢字を併記したら読みやすくなった」というエビデンスは、今だ得られていない（というよりも意味がないという結果が多い）のが現状です。

　漢字に慣れてしまっている人にとっては、「漢語を漢字で書かないんなんてなんて不便なんだ」「漢語なら漢字で書いてほしい」と思う人もいるかもしれません。しかし、韓国語は現在ほとんどハングルで表記されているので、韓国語を勉強するためには、ハングルで書かれた漢語になれるしかないのです。

　でも、漢語が漢字で書かれていないからと言って、理解するのが困難というわけではありません。漢語の発音が、日本の漢字の音読みに近いものもありますし、日韓の漢字音の比較をするとある規則性を見つけ出すことも可能です（規則性については、また違う機会にお話しします）。

（２）「漢語」だかと言って、必ずしも「漢字」に当てはめて考えればいいとは限らない

　漢語の発音が、日本の漢字の音読みに近いものもありますし、日韓の漢字音の比較をするとある規則性を見つけ出せることはたしかです。しかし、韓国語はハングルで書かれているので、必ずしも漢語を全て漢字に直してから覚えるという必要性があるわけではありません。

　特に、副詞は漢語も多いですが、漢語だからと言って、「평소：いつも（平素）」「지금：今（只今）」「도저히：到底（到底히)」を漢字に置き換えて覚えている人は少ないように思われます。「평소：いつも（平素）」「지금：今（只今）」のように日本では、公文などの書き言葉で多用される漢語であっても、韓国語では日常で話し言葉として多用されている漢語の場合は、漢字としての意識は薄れてしまうようです。

　また、複雑な意味をもつ「어차피：どうせ（於此彼⇒本来は「於此於彼(어차어피)」で、これにおいてもそれにおいても、どっちみちというのが語源）」「도무지：とうてい(都無知⇒本来「塗貌紙 （도모지）」という塗れた紙を顔にかぶせて窒息させる刑罰方法が語源で、「（この刑罰には）とうていかなわない」というのが由来)」は、漢字を見たからと言って意味が推測できるわけではないので、『漢字に置き換えない方が』覚えやすいと思われます。

　結局韓国語は、「漢語」だかと言って、必ずしも「漢字」に当てはめて考える必要がないとも言えます（ただ、漢字に置き換えた方が便利なものもたくさんあることは認めます）。

（３）「二音以上ある漢字」は、「意味」に着目して覚える

　韓国の漢字音は、いわゆる音読み（中国から伝わった読み方）しかありません。「人」という漢字を見て、「사람」と読む習慣がないため、音読み―訓読みという対立が生じず、「音読み」という概念自体がないのです。しかし、音読みは日本と同様に、複数ある場合があります。

　日本の場合、5，6世紀に仏教関連言葉と同時に伝わった「呉音」と呼ばれる音読み、7～9世紀に伝わってきた「漢音」、10世紀以降伝わったとされる「宋音（唐音）」の三つに分けられます。例えば、「明」は、「ミョウ（明後日）」「メイ（明確）」「ミン（明朝体）」という具合に、呉音、漢音、宋音（唐音）区別がなされます。「建」という漢字は、仏教用語の「建立（コンリュウ）」で使われる時は呉音の「コン」ですが、後世仏教用語以外で使われるようになった漢音では「ケン」と読むことになっています。「境内」における「内」も仏教用語なので「ダイ」で読みますが、他は「ナイ」とされています。

　韓国にもこのよな音の使い分けがあるのですが、ここで重要なのは、「一つの漢字の読みがたくさんある」ことではなくて、「単語の意味（言葉の使い方）によって音を変える」という点です。「単語の意味（言葉の使い方）によって音を変える」というのは、日本語でも「便」を「排泄物」の意味では、「便所（ベンジョ）」のように「ベン」と読み、「郵便（ユウビン）」では、「ビン」と読むような区別を日常でもしています。

　このように、韓国語の漢語を覚える時には、「単語の意味（言葉の使い方）」に注目して覚えるといいでしょう。「漢字一字だけ見て、複数の読みを思い出せる能力」は鍛える必要はありません（そういう能力を自慢したいのなら別ですが）。

　以下に示すように、二音以上ある漢字が含まれる単語については、「この漢字音は〇と〇」と覚えるのではなくて、「単語の意味（言葉の使い方）によって音が変わる」ことに注目して覚えるのがコツです。

※韓国語には、「頭音法則」によって音が変わる漢語があります。これは、「意味」とは関係なく、音の法則なのでここでは扱いませんが、詳しく知りたい方は以下をご覧ください。

「二音以上ある漢字」

＜さらに＞

　日本の音読みから想像しにくい漢字も意味に着目して覚えた方が、覚えやすいです。

＜子音が一致しないもの＞

＜日本語がヤユヨでも韓国語ではヤユヨじゃないもの＞

＜日本語の「ウ」か「オ」が、韓国語で「オ」か「ウ」になって逆転しているもの＞

＜もっと詳しく＞

日本語の二音節目が「ク」「キ」「ツ」「ン」があるけれど、韓国語で「ㄱ」「ㄴ」「ㄹ」パッチムがない（またはなくなる）漢字

日本語で「二音節目がイ」だけれど、韓国語では「イ」がわかりにくくなっている漢字