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Ｄ－３１．漢字語のㄴ脱落について整理する。

＜これだけは＞

「頭音法則（頭音規則）」

　漢語の中には、単語の語頭に来る子音に制約がある場合があります。例えば、子音「ㄴ」から始まる漢字「女（녀）」は、「男女（남녀）」のように二文字目以降では「女（녀）」そのままで発音（表記）できますが、「여자（女子）」のように語頭に来ると、「女（여）」と子音がなくなった状態で発音（表記）します。　また、「理（리）」は、二文字目以降で「摂理(섭리)」のようにそのままですが、「理想（이상）」のように語頭では、「이」と子音がなくなった状態で発音（表記）します。以上のように本来ある子音を語頭で発音（表記）しないものがあったり、さらに、「来（래）」のように、二文字目以降では「未来（미래）」のようにそのままで、語頭では「내일（来日＝あした）」のように「ㄹ」と「ㄴ」の入れ替えがあるものがあります。

　いずれにせよ、「頭（最初）の音が変化するルール」が適用されています。これを「頭音法則」または「頭音規則」と呼んでいます。

　特に、単語の始めに「ㄹ」つまりラ行が来ないというのは、韓国語の特徴でもあります。韓国語辞典を開くと「ㄹ」から始まる単語は外来語くらいしか見つけることができません。「ㄹ」から始まる単語は言いにくいというのが理由のようですが、北朝鮮語では頭音規則がなく、「労働」「料理」は「로동」「료리」と発音（表記）します。韓国では「노동」「요리」と発音（表記）するのが一般的です。

「漢語の鼻音『ㄴ』は、『ㅣ, ㅑ, ㅕ, ㅛ』の前では『無音』になる」

　「니, 냐, 녀, 뇨」を持つ漢語は、語頭に来る場合、「이, 야, 여, 요」と置き換えられます。

＜니から始まる漢字＞

＜니から始まる漢字＞

※嬢は漢字音が「냥」だが、語中でも「양」で使われるようである。

＜녀から始まる漢字＞

＜뇨から始まる漢字＞

＜뉴から始まる漢字＞

＜さらに＞

「接頭辞」や「合成語」の場合は、「이, 야, 여, 요」になる。

「한글 맞춤법（ハングル綴り字法）第3章第10節附録2」によると、「接頭辞」がついたり、「合成語」では、二文字目以降でも、「니, 냐, 녀, 뇨」ではなく、「이, 야, 여, 요」で発音（表記）する事になっています。

※「接頭辞」「合成語」については、「Ｄ－３５．派生語について整理する」「Ｄ－３４．合成語について整理する」をご覧ください。

　신여성（新女性）、남존여비（男尊女卑）、공염불（空念仏）

しかし、このように、「신（新）」「공（空）」のような鼻音パッチムも持つ接頭辞の場合は、「ㄴ添加」が起こるので発音は、どっちみち「녀」の音になってしまうことに注意してください。この場合、発音は「녀」であっても、表記は「여」というルールが適応されます。　

※「ㄴ添加」については、「Ｃ－３６．【ㄴ添加】前の単語にㅁ、ㄴ、ㅇパッチムがある場合のㄴ添加について整理する」をご覧ください。

　＜実際の発音＞

　　신여성[신녀성]（新女性）

　　남존여비[남존녀비]（男尊女卑）

　　공염불[공념불]（空念仏）

「二つ以上の単語が連なっている固有名詞」では、「이, 야, 여, 요」になる。

「한글 맞춤법（ハングル綴り字法）第3章第10節附録3」によると、二つ以上の単語が連なっている固有名詞では、二文字目以降でも、「니, 냐, 녀, 뇨」ではなく、「이, 야, 여, 요」で発音（表記）する事になっています。

　서울여자대학교（ソウル女子大学）

＜もっと詳しく＞

　北朝鮮の場合は、表記法や発音法が韓国とは異なるため、上で説明した規則は適用されません。

＜니から始まる北朝鮮の漢字＞

＜니から始まる北朝鮮の漢字＞

※嬢も「냥」だが、語中でも「양」で使われる。

＜녀から始まる北朝鮮の漢字＞

＜뇨から始まる北朝鮮の漢字＞

＜뉴から始まる北朝鮮の漢字＞