E－54．【게 하다】の使役（사동）について整理する。
＜これだけは＞
「使役の分類」
韓国語の「使役（사동）」は、動詞 の語幹に「이,히,리,기,우,구,추」を加えて作る ものと、動詞の語幹に「게 하다」「게 만들다」を付けるもの、動詞「시키다（させる）」を使って表現するものがあります。同じ使役といっても、それぞれ用法が違います。それぞれの使い方を区別して使うようにしましょう。
ここでは、動詞の語幹に「게 하다」を付ける使役を整理します。
ところで、「使役」とはなんでしょうか。おおざっぱに言って使役とは、「Ａさんが言葉や物理的力を使ってＢさんに影響を与えることで、Ｂさんを行動に移させる」ことです。次の日本語で考えてみましょう。
（１）母は妹に、新しい服を着せた：어머니는 여동생에게 새로운 옷을 입혔다.
（２）母は妹に、古い服を着させた：어머니는 여동생에게 헌 옷을 입혔다. /입게 했다.
（３）母が大事にしている服を妹に着させた：어머니는 당신이 아끼는 옷을 여동생에게 입혔다/입게 했다.
読み手の解釈によもよるのですが、（１）の「着せる」は、「妹が母に指示を受けて、自分で着た」というよりも「母が妹の着替えを手伝った」可能性が高いです。（２）の「着させる」は、「妹が母に指示を受けて、自分で着た」可能性が高いです。（３）は、どうやら妹が着たがっているらしいと推測できることから、妹が率先して自ら服を着ている可能性が高いです。
「Ａさんが言葉や物理的力を使ってＢさんに影響を与えることで、Ｂさんを行動に移させる」という使役の定義から考えて、「Ｂさん（妹）を行動に移させ」ている（２）と（３）は「使役」で、（１）は厳密に「使役」ではないと言えます。
日本語において「着せる」は他動詞、「着させる」は使役だということが「形」を見てもはっきりわかります。ただ、読み手によっては（１）（２）（３）全て「妹が服を着るのを母が手伝った」と考える人もいるかもしれません。結局、形だけでは、意味の区別を上手くできないといえます。
「使役」というのは、このような「誰がするのか」が曖昧な面があります。韓国語でも同様で、すべて「입히다」と表現できます（詳しくは、「E-53.이,히,리,기,우,구,추の使役について整理する」）。しかし、「입게 하다」というような「게 하다」の使役を使うと、意味合いがハッキリ区別できます。ハッキリ区別するために、上の文を少し作り替えて状況を明らかにしてみましょう。
「強制、許容、放任の使役」
（４）【他動詞】母は妹に、新しい服を着せた：어머니는 여동생에게 새로운 옷을 입혔다.
（５）【強制】母は嫌がる妹に、古い服を着させた：어머니는 입기 싫어서 짜증내는 여동생에게 헌 옷을 입게 했다.
（６）【許容・放任】しかたなく、母が大事にしている服を妹に着させた：어쩔 수 없이 어머니는 당신이 아끼는 옷을 여동생에게 입게 했다.
（４）の「着せる」は、日本語の解釈と同じで「母が妹の着替えを手伝った」可能性が高いです。反対に（５）の「着させる」は、「なかなか着ようとしない妹に母が指示を出して、強制的に自分で着させた」可能性が高いです。もし、「母が服を手に取って、無理やり妹にかぶせるように着せた」のであれば、「着せる（他動詞）」が適当に思われます。（６）は、母は自分が大事にしている服なので自分から着せることはしたくないと考えられます。着たがっているのは妹なので、しかたなしに「着てもいいよ」と許可をだしていると解釈でき、妹が率先して自ら服を着ている情景が浮かびます。
韓国語をみてみると、「Ｂさん（妹）を行動に移させ」ている（５）と（６）は「입게 하다」と「게 하다」の使役を使っています。つまり、「母が手伝っている場合（１）（４）」は確実に「입히다」をつかい、「強制、許容、放任の意味が強い場合（５）（６）」は「입게 하다」を使うという区別ができるわけです。「母が手伝っているかどうか解釈が別れる場合（２）（３）」は両方使えます。
話が少しややこしいですが、ここで一度まとめると、「相手に命令してさせる」「相手がしたがらないけどさせる」という【強制】の意味合いが強い時や、「したがっているのでさせる」「関与したくないので相手の自由にさせる」という「させる」時の使役は、「게 하다」で表現するということです。
「게 하다の直訳」
「게 하다」の形は、動詞の語幹に動詞を副詞化させる「게（～するように）」をつけて、後ろに「하다」を置く事でつくれます。「하다（する）」なら「하게 하다（させる）」、「먹다（食べる）」なら「먹게 하다（食べさせる）」のように変えます。「게」は「～するように」という意味なので、直訳すると「하게 하다（するようにする）」「먹게 하다（たべるようにする）」という感じです。日本語の「させる」というニュアンスよりも、「そのようにする」という意味が強いと思います。ですから、「게 하다」は「E-53.이,히,리,기,우,구,추」の使役よりも、
・【強制】（無理に）そのようにする。
・【許容・放任】そのようにしておく。
という意味が強くなるのです。
＜さらに＞
「強制の게 하다」
「強制」は、行動を行う本人が「本当ならやりたくない」「めんどくさい」「やる意味が分からない」と思っている場合です。
（５）母は嫌がる妹に、古い服を着させた：어머니는 입기 싫어서 짜증내는 여동생에게 헌 옷을 입게 했다.
しかし、「やりたくないとか以前に、する考えすら浮かんでいなかった人の手助けをする」（７）のような場合も含めます。
（７）先生は、何をすればいいかわからなチョルスに、初級の本を読ませた。：선생님은 어쩔 줄 모르는 철수에게 초급 책을 읽게 했다.
使役ではよく「에게（だれだれ）に」という助詞を使いますが、命令する意味が強い場合「더러（（だれだれ）に）」「보고（（だれだれ）に対して）」という助詞と相性がいいです。「보고」は書き言葉より話し言葉でよく使われます。
（８）先輩が私に資料を持ってこさせた。：선배가 나보고 자료를 가져오게 했어요.
（９）誰が君にその仕事をさせたの？：누가 너보고 그 일을 하게 했어요?
（１０）先輩が私に資料を持ってこさせた。：선배가 나더러 자료를 가져오게 했어요.
（１１）誰が君にその仕事をさせたの？：누가 너더러 그 일을 하게 했어요?
「許容・放任の게 하다」
「許容」は、させる側に許容する権利があり、「させるか／させないか」を決められる場合です。
（６）しかたなく、母が大事にしている服を妹に着させた：어쩔 수 없이 어머니는 당신이 아끼는 옷을 여동생에게 입게 했다.
（１２）子どもをプログラミング教室に通わせる：아이를 코딩 학원에 다니게 한다.
「許容」は、「아/어 주세요（～てください）」「아/어 주다（～てくれる）」と共に使うと、「～させてください」という許可を得る表現になります。
（１２）私の思い通りにさせて。：내 마음대로 하게 해 줘.
（１３）どうか、このままいさせてください。：부디 이대로 있게 해 주세요.
「放任」は、させる側に許容する権利があまりないか、全くない場合で、「相手のしたようにさせる」場合です。
（１４）子どもを自由に外で遊ばせる。：아이를 자유롭게 밖에서 놀게 한다.
（１５）図書館の本を自由に読ませる。：도서관의 책을 자유로이 읽게 한다.
＜もっと詳しく＞
使役を、「Ａさんが言葉や物理的力を使ってＢさんに影響を与えることで、Ｂさんを行動に移させる」と考えてはいけない理由
動詞の中には、「自分でするほかない使役」と、「他人が関与できる使役」が存在します。例えば、「読ませる」という使役は、
・母は子どもに自由に本を読ませた。
・母は本を読みたがらない子どもに無理やり本を読ませた。
「読む」という行為自体、本人がしなければならないので、「本を読む」という行為に他人が関与できる余地がありません。「読ませる」という使役は、「読む行為を本人に任せるしかない」のです。しかし、
・母親は赤ちゃんに自由にご飯を食べさせた。
・母親はご飯を食べたがらない赤ちゃんに食べさせた。
「食べさせる」だと、母親が介入する場合にもそうでない場合にも解釈できます。このように、動詞によって、「自分でするほかない使役」と、「他人が関与できる使役」になるものが存在するのです。言語学者ならこのような違いが楽しめるのですが、大抵の人は、こんなことまで考えて動詞を使い分けたくないと思います。だれが行動しているの？といちいち考えるより、韓国語では「強制」「許容・放任」では「게 하다」それ以外は、「どちらも使える」くらいの考え方で覚えていた方が良いと思います。
「二重使役」
「게」は「～するように」という意味なので、直訳すると「하게 하다（するようにする）」になります。そのため、
・私がチョルスに、ウサギに草を食べさせるようにさせた：내가 철수에게 토끼한테 풀을 먹이게 했다.
のように、「먹이다（たべさせる）」「게 하다（させる）」といった使役を二重にした表現が可能です。
「도록 하다と置き換え可能な게 하다」
主に、「～できるようにさせてください」「～できるようにしてください」という表現の時、「게 하다」は「도록 하다」と置き換え可能になります。「祈り」の時に多く使われます。
・私がいい男と出会えるようにしてください：제가 좋은 남자를 만날 수 있게 해 주십시오.
・私がいい男と出会えるようにしてください：제가 좋은 남자를 만날 수 있도록 해 주십시오.