Ｄ－３ ６．「사이시옷（あいだのㅅ）」について整理する。
＜これだけは＞
（１） 「사이시옷（あいだのㅅ）とは」
名詞の「合成語」の内、単語と単語の間に「ㅅパッチム」を挿入して合成語を成しているものがあります。
例１：차（お茶）+ㅅ（の）+ 집（店） ⇒ 찻집（茶屋≒喫茶店）
例２：고추（唐辛子）+ㅅ（の）+ 가루（粉） ⇒ 고춧가루（唐辛子の粉）
例３：뒤（後）+ㅅ（の）+ 받침（支え） ⇒ 뒷받침（後押し）
上の例をみると、単語の下に「ㅅ」がパッチムとして挿入され、後ろの単語にくっ付いて合成語を成しているのがわかります。 この時、「ㅅ」は助詞の「の」役割をしています（助詞ではなく、あくまでも「の」の役割をしているということです）。
前の単語□□と、後ろの単語〇〇の間に入れる「ㅅ」を「사이시옷（あいだのㅅ）」と呼んでいます。
（２） 「사이시옷（あいだのㅅ）がつく条件」
「사이시옷（あいだのㅅ）」は、名詞であれば何にでもつくことができるわけではありません。しかし、이익섭,이상억,채완著・梅田博之監修・前田真彦訳(2004：118)によると、「繋ぎのㅅが出現する条件はまだ明らかにされていない」とされています。はっきりした条件を述べることは難しいのですが、ここでは便宜上、次の条件を設定してみます。
条件①：前の□□に該当する単語が「パッチムではなく、母音で終わる」単語
条件②：前の単語□□と後ろの単語〇〇が日本語の「□□の〇〇」の関係になっている合成語の場合
条件③：前の単語□□が後ろの単語〇〇の「材料」、「形状」、「対比語」、「所有者または、動物」ではない場合
まず条件①です。「사이시옷（あいだのㅅ）」は、母音で終わる単語にパッチムとして挿入します。そのため、パッチムがある単語には使えません。
そして、条件②ですが、日本語で「□□の〇〇」の関係になっている合成語の場合です。 ただし、日本語で「□□の〇〇」の関係になっていても、 「日本語の本」と訳せる「일본어 책」は、「사이시옷（あいだのㅅ）」は使えません。日本語で「□□の〇〇」の関係になって いても、「일본어 책」のように合成語として認められていないものは、「×일본엇책」のようにすることはできません。 同様に「일본 사람（日本の人）」「한국 요리（韓国の料理）」なども同様です。
最後に条件③ですが、これが少し複雑です。合成語であっても、前の単語□□が「材料」「形状」「所有者または、動物」の場合は「사이시옷（あいだのㅅ）」が使えません。
材料：고추장（唐辛子で作った醤）,기와집（瓦素材の屋根の家）、나무배（木が素材の船）、도토리묵（どんぐりが材料のムク）、고무신（ゴムの靴）
※판잣집（掘っ立て小屋）は、「판자（板でできた）+집（家）」という構造であるが、「사이시옷（あいだのㅅ）」 が適用される。
形状：가루비누（粉の石鹸）、가루눈（粉雪）
※「고춧가루（唐辛子の粉）」の場合は、前の単語「고추（唐辛子）」が、後ろの単語「가루（粉）」そのものであるので「形状」でも、「材料」でもないので、「사이시옷（あいだのㅅ）」を使う。
所有者または動物：오리걸음(鴨の歩み)、새우등（エビの背）
この中で特に所有者に関しては、合成語ではなく助詞「의（の）」を使って表現されることが多いです。
例：아버지의 가방（父のかばん） 、나의 생각（わたしの考え）
また、接頭辞「이（この）, 그（その）, 저（あの）」が「것（もの）」と結合した指示詞は、合成語ではありますが、「사이시옷（あいだのㅅ）」 は不要です。
이것（このもの＝これ） ×잇것
그것（そのもの＝それ） ×긋것
저것（あのもの＝あれ） ×젓것
以上の事を踏まえ、고영근, 구본관(2008：237-238)では一応「사이시옷（あいだのㅅ）」があらわれる場合を次の4つに分けています。
＜目的・用途（～するための～）＞
・고기（魚） + ㅅ + 배（船） ＝ 고깃배（魚を取るための船＝漁船）
・고기（肉） + ㅅ + 집（店） ＝ 고깃집（肉を売るための店＝焼肉店）
・차（お茶） + ㅅ + 잔（盃） ＝ 찻잔（お茶を飲むための盃＝茶碗）
・초（ろうそく） + ㅅ + 대（台） ＝ 촛대（ろうそくを立てるための台＝燭台）
・머리（頭） + ㅅ + 수건（タオル） ＝ 머릿수건（頭を包むためのタオル＝三角巾、頭にかぶるタオル）
・배（船） + ㅅ + 사람（人） ＝ 뱃사람（船に乗るための人＝船乗り）
＜時間＞
・예（古の） + ㅅ + 날（日） ＝ 옛날（古の日＝昔）
・어제（昨日の） + ㅅ + 밤（夜） ＝ 어젯밤
・하루（一日の） + ㅅ + 밤（夜） ＝ 하룻밤（一夜）
・오래（久しい） + ㅅ + 동안（あいだ） ＝ 오랫동안（長い間）
・보리（麦） + ㅅ + 고개（峠＝時期的な峠） ＝ 보릿고개（晩春、麦の収穫期前に米などが不足すること）
＜位置・地位＞
・뒤（うしろ） + ㅅ + 일（こと） ＝ 뒷일(後の事)
・뒤（うしろ） + ㅅ + 집（家） ＝ 뒷집（後ろの家）
・뒤（うしろ） + ㅅ + 모습（姿） ＝ 뒷모습（後ろ姿）
・뒤（うしろ） + ㅅ + 머리（髪） ＝ 뒷머리（後ろ髪）
・사이（あいだ） + ㅅ + 소리（音） ＝ 사잇소리（合成語間で起こる濃音化）
・위（上） + ㅅ + 사람（人） ＝ 윗사람（年、位が上の人、目上の人）
・아래（下） + ㅅ + 사람（人） ＝ 아랫사람（年、位が下の、目下の人）
・아래（下） + ㅅ + 마을（村） ＝ 아랫마을（川下の村）
・귀（耳） + ㅅ + 속（中） ＝ 귓속（耳の中）
・귀（耳） + ㅅ + 구멍（穴） ＝ 귓구멍（耳の穴）
・머리（頭） + ㅅ + 속（中） ＝ 머릿속（頭の中）
＜物そのもので分離が難しい（人や動物以外）＞
～液体で分離が難しい～
・김치（キムチ） + ㅅ + 국（汁） ＝ 김칫국（キムチ汁）
・순대（スンデ） + ㅅ + 국（スープ） ＝ 순댓국（スンデスープ）
・북어（干しタラ） + ㅅ + 국（スープ） ＝ 북엇국（干しタラのスープ）
・바다（海） + ㅅ + 물（水） ＝ 바닷물（海水）
・비（雨） + ㅅ + 물（水） ＝ 빗물（雨水）
・시내（小川） + ㅅ + 물（水） ＝ 시냇물（小川の水）
・수도（水道） + ㅅ + 물（水） ＝ 수돗물（水道水）
・코（鼻） + ㅅ + 물（水） ＝ 콧물（鼻水）
～火や光～
・해（日） + ㅅ + 빛（光） ＝ 햇빛（日の光）
・연두（軟豆＝薄緑） + ㅅ + 빛（光） ＝ 연둣빛（薄緑の光）
・장미（バラ） + ㅅ + 빛（光） ＝ 장밋빛（バラ色）
・초（ろうそく） + ㅅ + 불（火） ＝ 촛불（ろうそくの火）
・해（日） + ㅅ + 볕（日向） ＝ 햇볕（陽当たり）
※「햇빛（日の光）」は、視覚的な「光」の意味が強く、「햇볕（陽当たり）」は、「日の光の温度（暖かさ）」を含んだより広い意味を持つ。
～音～
・노래（歌） + ㅅ + 소리（声） ＝ 노랫소리（歌声）
・코（鼻） + ㅅ + 소리（声） ＝ 콧소리（鼻声）
～一体で境界線を引くのが難しい～
ほとり
・바다（海） + ㅅ + 가（ほとり） ＝ 바닷가（岸辺）
・시내（小川） + ㅅ + 가（ほとり） ＝ 시냇가（川辺）
すそ
・소매（袖） + ㅅ + 자락가（すそ） ＝ 소맷자락（袖すそ）
植物
・나무（木） + ㅅ + 가지（枝） ＝ 나뭇가지（木の枝）
・나무（木） + ㅅ + 잎（葉） ＝ 나뭇잎（木の葉）
・깨（えごま） + ㅅ + 잎（葉） ＝ 깻잎（えごまの葉）
・벼（稲） + ㅅ + 짚（わら） ＝ 볏짚（稲わら）
体
・이（歯） + ㅅ + 몸（体） ＝ 잇몸（歯茎）
粉
・고추（唐辛子） + ㅅ + 가루（粉） ＝ 고춧가루（唐辛子の粉）
・재（灰） + ㅅ + 더미（積み上げられた山） ＝ 잿더미（灰の山）
＜さらに＞
（１）慣例的につく「사이시옷（あいだのㅅ）」
人間以外の生物の「雄」を表す「수」は、慣例的に「양（羊）」「염소（ヤギ）」「쥐（ねずみ）」につくとき、「사이시옷（あいだのㅅ）」 が付くことになっています。
・수（雄） + ㅅ + 양（羊） ＝ 숫양（雄羊）
・수（雄） + ㅅ + 염소（ヤギ） ＝ 숫염소（雄ヤギ）
・수（雄） + ㅅ + 쥐（ねずみ） ＝ 숫쥐（雄のネズミ）
（２）漢字につく「사이시옷（あいだのㅅ）」
「사이시옷（あいだのㅅ）」 は、漢字にも付きます。ただし、「漢字+ㅅ+漢字」のパターンは6個だけと決まっています。
＜漢字に付くㅅ＞
「漢語+ㅅ+固有語」
・저（箸） + ㅅ + 가락（細長い棒状（筒状）のもの） ＝ 젓가락（ 箸）
・기（旗） + ㅅ + 발（語源は謎だが、「はた」の意がある） ＝ 깃발（旗）
・의부（義父） + ㅅ + 아들（息子） ＝ 의붓아들（つれ子：義理の息子）
・의부（義父） + ㅅ + 딸（娘） ＝ 의붓딸（つれ子：義理の娘）
・의부（義父） + ㅅ + 아버지（父） ＝ 의붓아버지（継父）
・의부（義父） + ㅅ + 어머지（母） ＝ 의붓어머니（継母）
・처가（妻家） + ㅅ + 집（家） ＝ 처갓집（妻の家）
・등교（登校） + ㅅ + 길（道） ＝ 등굣길（通学路）
・시계（時計） + ㅅ + 바늘（針） ＝ 시곗바늘（時計の時刻を差すための針＝時計の針）
・후（後） + ㅅ + 날（日） ＝ 훗날(後日）
・공기（空器＝茶碗） + ㅅ + 밥（ご飯） ＝ 공깃밥(茶碗やステンレス製の器（공기）に入っているご飯）
・치（歯） + ㅅ + 솔（ブラシ） ＝ 칫솔(歯ブラシ）
・예사（例事） + ㅅ + 일（こと） ＝ 예삿일(通常時の事／普通の事）
「漢語 +ㅅ+漢語」 は次の6つだけ存在します。
・고（庫） + ㅅ + 간（間） ＝ 곳간(倉庫、物置）
・세（貰） + ㅅ + 방（房） ＝ 세방(家賃を払う部屋＝賃貸）
・수（数） + ㅅ + 자（字） ＝ 숫자(数字）
・차（車） + ㅅ + 간（間） ＝ 찻간(車中、車内）
・퇴（退） + ㅅ + 간（間） ＝ 툇간(物置）
・회（回） + ㅅ + 수（数） ＝ 횟수(回数）
たまに「싯가（時価）」という表記を見かけますが、標準ではないようです。また、 回数を表す時に、「회 차（回次）」という表現を用いますが、「횟차（回次）」 のように、「사이시옷（あいだのㅅ）」 を使った合成語は標準ではありません。「〇회 차（〇回目）」「〇일 차（〇日目）」というように分かち書きするのが標準のようです。
＜もっと詳しく＞
（１）「사이시옷（あいだのㅅ）」 が付かない理由がよくわからない例
＜目的・用途（～するための～）＞の時に、「사이시옷（あいだのㅅ）」 が付くのであれば、
・노래방（カラオケ） ＝ 歌うための部屋
・기차역（汽車駅） ＝ 汽車に乗るための駅
・기차표（汽車の切符） ＝汽車に乗るための切符
のような合成語にも「사이시옷（あいだのㅅ）」 が付きそうですが、上の単語には「사이시옷（あいだのㅅ）」 は付きません。
また、＜物そのもので分離が難しい（人や動物以外） ＞ものであっても、以下のようなものには、「사이시옷（あいだのㅅ）」 は付きません。
・머리말（序文、はしがき、まえがき）
・예사말（敬語ではない、普段の言葉づかい）
・인사말（挨拶のことば）
・반대말（反対語、反義語）
・소머리（牛の頭）
（２）「사이시옷（あいだのㅅ）」 の後ろに「ㄱ, ㄷ, ㅂ, ㅅ, ㅈ」がきた場合と、鼻音がきた場合
「사이시옷（あいだのㅅ）」 の後ろに「ㄱ, ㄷ, ㅂ, ㅅ, ㅈ」がきた場合は、特別な音韻変化はなく、通常通りに濃音化します。
・바닷고기[바다꼬기/바닫꼬기]（海水魚：해수어（海水魚）とも）↔민물고기（淡水魚：담수어（淡水魚）とも）
・조갯살[조개쌀/조갣쌀]（貝の身）
・콧등[코뜽/콛뜽]（鼻筋）
・갈빗대[갈비때/갈빋때]（肋骨）
・갯돌[개똘/갣똘]（川にある大きな丸石）
・곗돈[계똔/곋똔] （契で出すお金：頼母子講、互助会のお金）
・나룻배[나루빼/나룯빼]（渡し舟）
・고깃배[고기빼/고긷빼](漁船)
・귓병[귀뼝/귇뼝] （耳の病気）
・뒷산[뒤싼/뒫싼]（裏山）
・전셋집[전세찝/전섿찝] （保証金一括払いの賃貸）
・찻집[차찝/찯찝]（茶屋、喫茶店）
・가겟집[가게찝/가겓찝]（店、店舗）
しかし、「사이시옷（あいだのㅅ）」 の後ろに鼻音がきたり、「이,야,여,요,유,얘,예」がくる場合は、鼻音化を起こしたり、「ㄴ添加」を起こ します。詳しくは「Ｃ－４４．【鼻音化】사이시옷パッチ無の鼻音化について整理する」をご覧ください。
参考文献
李昌烈(2014)「改訂版ハングル能力検定試験準2級合格をめざして」白帝社
고영근, 구본관(2008)「우리말 문법론」집문당
이익섭,이상억,채완著・梅田博之監修・前田真彦訳(2004：118)「韓国語概説」大修館書店