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Ｃ－2．【어/오・우/으】 日本語とは少しことなる、または日本語にない単母音を整理し、発音のポイントを言葉で書く。

＜これだけは＞

「聞き分けられる力」と「発音できる力」は別物

　Ｃ－１でも触れましたが、「聞き分けが難しい」と、どう発音し分ければいいのかがわからなくなって、「発音が難しい」と思ってしまいます。しかし、厳密に言うと、、「聞き分けが難しいこと」と「発音が難しい」ことは別の話です。

　どうして別の話なのかというと、

　聞き分け＝耳と聴覚器官、そして主に聴覚を司る脳の部位を使う

　発音＝唇、口、舌、鼻、歯、のど、肺、そして主に運動を司る脳の部位を使う

　というように、使う身体機関が異なるからです。

　極端な話かもしれませんが、聞き分けができなくても、正確に「唇、口、舌、鼻、歯、のど、肺、そして主に運動を司る脳の部位を使う」ことができれば、きれいな発音ができますし、逆に、聞き分けができても、正確に「唇、口、舌、鼻、歯、のど、肺、そして主に運動を司る脳の部位を使う」ことができなければ、きれいな発音はできません。

　それは、きれいな発音ができても、聞き分けが出来ない場合もあることを示唆します。（難聴者の中には、きれいな発音ができても、音の聞き分けがうまくできないという人がいます。それを考えると、聞こえる＝発音ができると直結しないことがわかります。）

　聞き分けは運動神経を鍛えるのとは少し違って、これもまた極端な話かもしれませんが、高齢の方は声が聞き取りにくくなることもありますし、絶体音感のように、幼少期に聞き分けの訓練を受けていないと、何度聞いても聞き分けられないという音も、「人によっては」でてきます。聞き分けというのは、個人差が激しかったりするので、何度聞いてもわからないという人が出てくるのが、「聞き分け」です。

　一方発音は、唇、口、舌の筋肉を鍛えること、肺や喉、鼻から息を出すための筋肉の動かし方、それら筋肉を動かすことで、筋肉運動を統制する脳のネットワークを活発にすることで上達します。 手術を要する大きな身体的・脳神経的な障害がなければ、高齢者であっても、少し体が不自由であっても、体は動かせば動かすほど動きが機敏になりますから（だから、麻痺しても、体を動かせない障害があってもリハビリをできるだけするのは、意味があるからやっているわけです）、聞き分けることよりも、発音は上達させやすいわけです。

　ここでは、「聞き分け」ということを一旦考えず（今は聞き分けられなくても単語を覚えらえるようになると、聞き分けができるようになる 人もたくさんいます）、「発音」のポイントをまとめておきたいと思います。

＊稲川右樹（2019：18-19）「ネイティブっぽい韓国語の発音」（HANA）では、「音の線引きを自分の感覚で発見するのが先決」だと述べ、音の聞き分けができることを優先しています。しかし、年齢や身体的な個人差のために、世の中には聞き分けができるようにならない人がいることを考慮すると、発音の仕分け方から感じられるようになったほうがいい 人がいるのも確かです。そもそも、ここでは、「聞き分ける力」と「発音できる力」は別物と考えています ので、ここの説明では「発音できる力」のみに焦点を当てて説明したいと思います。

「聞き分けができくても、とりあえず口の形、あごの位置の説明を読んで発音練習する」

　韓国語の単母音の中で、「聞き取りが難しい」と感じるものは、「오/어」「우/으」の対立があります。なぜ、これが難しいかというと、この対立は日本語で区別をしないからです。どちらもカタカナで表記したものをみると「オ」「ウ」と書いてあります。でも、本来異なる発音の仕方、異なる音なわけですから、「オ」「ウ」で書いてはいけないものなのです。日本で売っている参考書は、「かなで書けないのに、かなで書いてある」せいで、余計こんがらがるわけです（そもそも、韓国や中国、アメリカで「オ」「ウ」で説明している参考書はありません。「オ」「ウ」という文字がないのですから）。

　「ハングルは、かなで書かずに覚える」というのが原則です。それではどうすればいいのでしょうか。

稲川右樹（2019：18）「ネイティブっぽい韓国語の発音」（HANA）では、

　世にあふれる韓国語のテキストを見ると、「ㅡは『い』の口の形で『う』と言う」とか「ㅗ」は日本語の『お』よりも唇を突き出す」とか、あの手この手で・・・説明しています。もちろん、その一つひとつは理にかなったことではあるのですが、それはあくまでも、「それを書いた人にとっての正解」であて、「全ての人にとっての正解」とは限りません。

　と述べています。

しかし、「それを書いた人の正解」をいろいろ参考にするのは有効です。例えば、ある事件の真相に迫るために は複数人の証言が必要です。「自分の勘」だけで裁判を起こせるわけではありません（「音の線引きを自分の感覚で発見するのが先決」というのは、その勘で裁判を起こせと言っているようなものです）。捜査員は一人の証言だけを調書に書くということはしないと思います。複数人から証言を得て、その証言を総合的に見て正解を導く。たとえ、それが「真実」でなかったとしても、犯人を捕まえて「裁く」根拠にできるわけです。 勘だけでは裁判の根拠になりません。発音は「判断する」というある意味「裁く」行為なわけですから、これと似ているような面があります。

　複数のテキストを照らし合わせて、一つの自分なりの答えを求めるということは重要なことです。なにより、参考書を吟味する力が養えますし、自分で考える力が付きます。「全ての人にとっての正解」とは限らないかもしれませんが、 口の形の、唇の形の説明を読むことは、何も悪いことではありません。そこで、いろいろな証言を集めて、ここでは発音の仕方を整理してみることにします。

（１）＜어/오＞の対立

　[어]の説明

　全体的に「口を大きく開ける」というところは共通ですが、「日本語のオを発音する」としてしまう説明も多く「結局オなんじゃないの」と解釈できるものも多くあります。ただ、詳しく見ていくと「ゆるく開ける」「緩んだ口でリラックス」「唇に力をいれずに」という解説も所どころ見受けられ、「オ」でありつつ、「オ」よりリラックスして発音するという点がポイントになりそうです。稲川(2019)においては、「アホなㅓ」と言っています。

一応、韓国で出版されたものも参考に載せておきます。

　韓国で出版されたものは、日本語で書かれていないので「日本語の『オ』」という表現は当然出てきません。「聞いて真似する」式なので、「この２つのポイントを押さえて、あとは真似してね」ということなのでしょう。

　確かに聞いたままマネできればいいのですが、むずかしいと感じる人もいると思うので、下の１～３をポイントにして発音練習してみましょう。

まとめると「어」は、

　１．口の構え：顎を下げる＝口が縦に大きく開く（ただし、小指２本分）

　２．舌の位置：口の中でリラックス

　３．力み：リラックスまたは、アホな感じで「オ」を発音

となるでしょうか。

[오]の説明

稲川(2019)以外はすべて、「唇を丸く突き出す」という説明が共通です。これはほぼ疑わなくていい説明だと思います。ただ、「気を引き締めて」「口の筋肉を緊張させる」「シュッとした」という表現が散見されます。

一応、韓国で出版されたものも参考にすると、

となっています。韓国で出版されたものは、日本語で書かれていないので「日本語の『オ』」という表現は当然出てきません。「聞いて真似する」式なので、「この３つのポイントを押さえて、あとは真似してね」ということなのでしょう。しかし、ここで気になるのは、「唇を突き出す」という表現は出てきていません。日本だと「突き出す」という指示があるのに、韓国のものだと「突き出す」が出てきていないのも妙です。これは見解が分かれる部分ですが、「오」の場合、「口元を丸くした上で緊張させ」さえすればる「突き出す」かどうかはあまり関係ないと言えるのかもしれません。

まとめると「오」は、

　１．口の構え：唇を丸くする。

　２．舌の位置：舌先を下げ、舌の後ろ部分は上げる。

　３．力み：口元を緊張させ、シュッとさせる。

となるでしょうか。

（２）＜우/으＞の対立

[우]の説明

「오」と同じく「唇を丸めて突き出す」ということは共通しているようです。しかし、「気合を入れる」「歯が見えないように唇に力を入れる」という表現も見受けられます。

一応、韓国で出版されたものも参考にすると、

となっています。韓国で出版されたものは、日本語で書かれていないので「日本語の『ウ』」という表現は当然出てきません。「聞いて真似する」式なので、「この４つのポイントを押さえて、あとは真似してね」ということなのでしょう。ただ、日本で出版されたものと比べてもそれほど大きな違いはありません。

まとめると「우」は、

　１．口の構え：唇を丸くして突き出す。

　２．舌の位置：舌先を下げ、舌の後ろ部分は上げる。

　３．力み：歯が見えないように唇に力を入れる。

となるでしょうか。

[으]の説明

全体的に、口（唇）を「横に引く」という説明は共通です。ところどころ、「奥歯と奥歯がつくぐらいに口を狭める」「力を抜く」「喉から声を出す」という表現が見え受けられます。

一応、韓国で出版されたものも参考にすると、

となっています。韓国で出版されたものは、日本語で書かれていないので「日本語の『イ』『ウ』」という表現は当然出てきません。「聞いて真似する」式なので、「この２つのポイントを押さえて、あとは真似してね」ということなのでしょう。日本で出版されたものと比べると、「口を横に引く」という表現がありません。しかし、서울대학교 언어교육원(2012)には口の形の図解があり、この図は「이」の図と一緒になっています。

まとめると「으」は、

　１．口の構え：「이」の形と一緒で、口を横に引く。

　２．舌の位置：奥歯と奥歯がつくかつかないかの隙間に舌を浮かせる。

　３．力み：力をいれずリラックス。

となるでしょうか。

＜さらに＞

　聞いてわけができないまま、発音練習をすることに不安を覚える人へ

　聞き分けができないと、どうしても正確な発音練習になっているか不安になってしまう人がいます。そういう人は、まず、聞き分けの訓練をしてから発音練習をしたほうがいいかもしれません。ただ、やはり何度聞いてもよくわからないという人もいると思います。そういう人は、上で整理した発音方法を参考にしつつ、次の方法で確認してみるといいと思います。

　今スマホ用のアプリの中には、「母音を可視化」 できるものがあります。例えば、「sonic　print」です。このアプリを使うと、自分の母音が正確に発音できているか、目で確かめることができます。

　ただし、このアプリで「韓国語の母音」を確かめるためには、少し知識と準備が必要で、簡単には手が出せないという人もいるかもしれません。そういう人は、NAVERなどの「音声認識」を活用するといいと思います。

　（１）sonic　printの使用方法とセッティング

　（２）「어」の練習

　（３）「오」の練習

　（４）「우」の練習

　（５）「으」の練習

　（６）NAVERの音声認識で「어/오・우/으」を練習してみる

　　＜準備中＞

＜別な観点から＞

　「聞き分け」という観点から、発音を考える（共感覚の話）

　上では「発音の力」に焦点を当てて説明してみました。では、「聞き分けの力」に焦点を当てた場合どういう説明になるのでしょうか。実はこの場合にこそ、稲川(2019)の「音の線引きを自分の感覚で発見する」という考え方が有効なのです。稲川(2019)では、ある発音を聞いた時、「こんな色に感じるな」という感覚で音を捉える例を挙げています。これは、「共感覚」と呼ばれるものです、声や音は「聴覚」で認識するものですが、色は「視覚」で認識します。このように聴覚と視覚といった違う感覚を同時に感じるという感覚を「共感覚」と言います。

　「赤い折り紙」（視覚）を見ると、「暖かく」感じる（触覚）

　「高い音」（聴覚）を聞くと、頭に「黄色」が浮かぶ（視覚）

など、人によって違いますが、一つの感覚入力に対して、それとは異なった感覚が呼び起され（出力され）るということがあります。よく絶体音感を持つ人が、ドは青だとか、レは緑だとか、音を色で表現したりするのもこのような共感覚の仕業です。

　稲川(2019)では、この共感覚を使いなさいとアドバイスしているわけです。ただ、どのような感覚の組み合わせが可能なのかは人によって異なります。それで、稲川(2019)は、「音の線引きを自分の感覚で発見する」と言っているわけです。「오」は「鋭くとがったナイフ」とか、「어」は「優しいアフリカゾウ」とか、その人がそう感じるなら、頭に浮かんだイメージを活用するという方法です。

　よって、市販されている韓国語教材の発音の説明は、「それを書いた人にとっての正解であって、全ての人にとっての正解とは限」らないわけですね。

こう考えると「聞き分ける力」は、勘に近いものであり、理屈では説明できるものではないことがわかります。「発音の力」は、複数の証言から真相に迫ることができますが、「聞き分ける力」の証言は、「어は赤だ」「어は優しいアフリカゾウだ」「어はカレーの味がする」「어は暖かい」という証言が集まってしまい、余計迷宮入りしてしまいそうです。

しかしながら、これも絶対音感のように、「自分だけの力」を見いだせるとしたら、ものすごい力になります。皆さんも何かと結びつけて共感覚を鍛えてみてはいかがでしょうか。

＊稲川右樹先生という人は多分、共感覚が強い人なのかもしれません。発音をある感覚と結びつけることにより、即座に正確な発音を発音する訓練を行った結果、ネイティブっぽい発音を身につけた可能性があります。