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Ｃ－1．【平音・激音・濃音】日本語とは少し異なる、または日本語にない子音を整理し、発音のポイントを言葉で書く。

＜これだけは＞

「子音が日本語と異なると感じる」理由は結局、「聞き分けが難しくて、発音の仕方が困難になる」ということ

　たぶん皆さんは、「日本語とは少し異なる、または日本語にない子音」と言われた時思い出すのが、「激音」と「濃音」だと思います。 これには理由があります。この激音と濃音は、日本語を母語とする人にとって「聞き分けが難しくて、発音の仕方が難しい」と感じやすい音だからです。聞き分けが難しいから、どう発音し分ければいいのかがわからない＝日本語と異なるとなてしまうわけです。

　ここにもう一度、平音、激音、濃音を整理しておきます。

野間秀樹(2007)「音声学からの接近」『韓国語教育論講座第1巻』くろしを出版によると、研究者によっては「ㅅ」「ㅎ」を激音にする人がいるようです。

　ただ「ㅅ」「ㅆ」「ㅎ」は、「日本語とは少し異なる、または日本語にない子音」として感じにくいのではないかと思います。なので、ここでは激音を「ㅋ、ㅌ、ㅍ、ㅊ」濃音を「ㄲ、ㄸ、ㅃ、ㅉ」として説明していきます。

　たしかに、平音、激音、濃音の聞き分けは最初の内は難しいです。発音教育に定評がある、稲川右樹(2019)「ネイティブっぽい韓国語の発音」でも、聞き分けるコツについては書かれていません（そもそも、この本は、発音の仕方を説明している本なので「どう聞くか」という言及は少ないです）。しかし、この本の観点のように、聞き分けができなくても、発音の仕方さえ覚えてしまえば、発音はできるようにな るということはあります。

　 　そこで、 聞けなくてもいいから、きれいに発音できるようにさえなれば、とりあえず発音は困らないので（聞くときに困ることがありますが、文脈でその単語が何かがわかると自然と区別して認識できるようになります）、はじめはそこを目標に頑張りましょう。

（１）平音＝ソフトに発音

　平音は、前田真彦著(2013:24)「韓国語発音クリニック」白水社では、「日本語の清音より少しソフトに」「語頭では低めに発音」、稲川右樹著(2019:42-49)「ネイティブっぽい韓国語の発音」HANAでは、「ㅂ」については「普段のぱ行より力を抜いて、ほとんどば行に近づけるぐらい」、「ㄷ」について、「普段のた行より力を抜いて、ほとんどだ行に近づけるぐらい」、「ㅈ」について「普段のちゃ行よりも力を抜いて、ほとんどじゃ行に近づけるぐらい」、「ㄱ」について「普段のか行より力を抜いて、ほとんどが行に近づけるくらい」という説明をしています。「日本語よりもソフトに」というのがコツになるようです。

　全イジョン著(2013:46)「ひとりでできる韓国語発音トレーニング」アスク出版「一般的には息の強さとのどの緊張によって平音、激音、濃音を区別しますが、これらの特徴によって言い分けたり、聞き分けたりするのは簡単ではありません」としながら、「平音、激音、濃音でもう一つ重要な違いが、音の高さです」としています。

（２）激音＝平音「ド」より高く「ファ」で発音

　激音に関して全イジョン(2013:47)は、平音は日本語の清音より低く「ド」の高さ、激音は日本語の清音より少し高く「ファ」の高さと言っています。稲川右樹(2019:86-94)では平音を「疲れた『た』」激音を「元気な『た』」としながら、音の高さまでの言及はありませんが「単語が平音で始まるときと激音・濃音で始まるときでは現れるアクセントの形が異なる」ので、日本人はアクセントを生かせと言っています。息を強く出すのは基本ですが、元気よく平音よりも高い音で発音すると激音になるということでしょう。

（３）濃音＝息漏れさせず、高く「シ」で濁らせて発音

　濃音に関して全イジョン(2013:47)は、濃音は激音より高く「シ」の高さを目安にするといいと言っています。稲川右樹(2019:91)では、「小さな『っ』＋濁音のつもりで発音」するといいと言及しています。そのわけは、「息漏れ」がなく、激音と間違われなくなるからとしています。前田真彦著(2013:25)では、「息を口の外に出さずに」「声を出す直前に、声門を占めて空気の流れを止めてから発音」としています。まとめると、「息漏れさせず、高めの音で濁らせる」ということになるでしょうか。 あと、「カラスの鳴きまね」に近づけると上手く出せる場合があります。

＜さらに＞

聞いてわからない、自分で発音してもいまいちできているのかがわからない人へ

　ただ、自分で発音したものが正しいかどうか、自分で聞き直してもよくわからないという人もいると思います。そういう人は、「音を可視化」してみるのも一つの手です。今では、音声認識機能が発達しているので、スマホがあれば機械が発音の正しさを判定してくれます。あと、音声分析アプリなどを使えば、平音、激音、濃音を可視化して見ることもできます。

（１）スマホの音声認識機能を使う

　スマホの音声認識アプリを使ったり、韓国のポータルサイトNAVERの検索窓で音声認識機能を使って、正しく発音できるか調べてみましょう。

　＜siriで平音・激音・濃音をチェックする＞

　＜NAVERで平音・激音・濃音をチェックする＞

（２）スマホやタブレットのアプリを活用する

　・音の高さを可視化する（ニンテンドーDS「ハングル三昧」）

　自分の発音の高低を調べるためのツールも出ています。平音、激音、濃音は音の高さも重要なので、ツールを使ってセルフチェックするのもいいでしょう。

　・音の形を可視化する（スマホ録音アプリ）

　スマホの機能を使えば、平音、激音、濃音を高さではなく「形」で認識することもできます。

　・音や息の強さを可視化する（アプリ「スペクトラムビュアー」）

　スマホのアプリを使えば、平音、激音、濃音の強さを可視化することもできます。

＜別な観点から＞

韓国語の発音と日本語の発音は、そもそも全部違う

（１）　＜日本語とは少し異なる子音＞

　いろんな参考書の「子音」の項目を見ても、「日本語と同じ発音です」という書き方はしていません。つまり、韓国語の子音と日本語の子音はすべて異なるのです。

　私の教室で使っている木内明著(2013)「基礎から学ぶ韓国語講座初級改訂版（初版第1刷）」国書刊行会のP.14～15を見ても、「～に近い発音ですが、～」というように、「同じ」という説明はしていません。

　全イジョン著(2013)「ひとりでできる韓国語発音トレーニング」アスク出版でも、「日本語の～に似ていますが、～」という記述になっていますし、前田真彦著(2013)「韓国語発音クリニック」白水社では、「平音の発音は日本語の清音より少しソフトに発音します（p.24）」と書かれています。

　稲川右樹著(2019)「ネイティブっぽい韓国語の発音」HANAにいたっては、明確な言及はないものの、「普段の〇行より力を抜いて、『ほとんど』〇行に近づけるといいでしょう」という表現の仕方をしています。「ほとんど」ということは、「同じ」というわけではないので、韓国語の発音は、平音であっても、「日本語と少し異なるもの」として考えた方がいいようです。

（２）＜日本語にない子音＞

　韓国語は外国語であって日本語ではないので、厳密には日本語の「が行」と同じとか、「じゃ行」と同じという言い方はできないのかもしれません。とうことは、全てが「日本語にない子音」ということになってしまいます。

　ただこれは、発音についてはまだまだわからないことがあって、日本語と韓国語の発音の比較はまだまだ研究対象になりえるとも言えます。誰かの答えを信じて「そうなんだ」と思いこむのではなく、皆さんが、それぞれ試行錯誤して、韓国語の発音を研究していけばいいのです。

　ですから、子音を勉強するときは、「日本語の〇行と似ている／異なっている」とか、「日本語の子音より息を強く出す／出さない」といったことをヒントに最初の内は学ぶのもいいのですが、「発音の仕方」に注目して学ぶといいような気がします。

　「韓国語の発音」ができるようになればいいのですから、日本語と比較しなくても学べると言えば学べます。

　そういった学び方の良著は今のところ、稲川右樹著(2019)「ネイティブっぽい韓国語の発音」HANAです。

　口の中の構造で示す、いわゆる口腔図を使う点では他の本と変わりがないのですが、平易な言葉で説明されていて読みやすいです。私がいろいろ説明するよりも、皆さんが稲川先生の本を読んだ方がより学びが深まると思います。