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Ｂ－３．ハングルの子音字を整理する

＜これだけは＞

「種類と読み方」

　（１）子音字の種類

　韓国語の子音字は、１４種類あります。厳密には、子音字を二個合わせた字（濃音）もあって、音としては、１９種類です。

・　覚える字の形＝１４個「ㄱ ㄴ ㄷ ㄹ ㅁ ㅂ ㅅ ㅇ ㅈ ㅊ ㅋ ㅌ ㅍ ㅎ」

・　発音できるようにならなければならない文字の形＝１９個「ㄱ ㄴ ㄷ ㄹ ㅁ ㅂ ㅅ ㅇ ㅈ ㅊ ㅋ ㅌ ㅍ ㅎ」＋「ㄲ ㄸ ㅃ ㅉ ㅆ」

　子音字を整理する時、「覚える字の形」で整理するか、「発音できるようにならなければならない文字の形」で整理するかで分かれますが、今回は、後者の「発音」で整理したいと思います。

　日本語で発音ごとに子音を整理すると「か行、さ行、た行、な行、は行、ま行、や行、ら行、わ行」のような「あ、い、う、え、お」を除外した５０音表の音と、「が行　ざ行　ば行」「きゃきゅきょ」「しゃしゅしょ」という小さい「やゆよ」が入った音（拗音）を区別して整理すると思います。

　しかし、韓国語では「か行／が行」のような「清音／濁音」の区別を考慮して整理することはありません。また、「や行」や「きゃきゅきょ」という小さい「やゆよ」の音は、「子音の区別」というよりも、「母音の区別」として扱うため、日本語を基準とした「子音の整理」とは違う観点で整理する必要があります（詳しくはＢ-５）。

　「文字を覚える」という観点からは、50音表や「反切表」のように整理してもいいのですが、ここではあくまでも、「発音」の観点から整理しておきます。

　（２）子音の読み方

　韓国語の「発音できるようにならなければならない文字の形」を、発音の仕方の観点から整理してみます。

・　発音できるようにならなければならない文字の形＝１９個「ㄱ ㄴ ㄷ ㄹ ㅁ ㅂ ㅅ ㅇ ㅈ ㅊ ㅋ ㅌ ㅍ ㅎ」＋「ㄲ ㄸ ㅃ ㅉ ㅆ」

　韓国語の発音では、「か行／が行」のような「清音／濁音」の区別を考慮する必要がない代わりに、「平音」「激音」「濃音」の区別をしっかりしておく必要があります。

　野間秀樹(2007)「音声学からの接近」『韓国語教育論講座第1巻』くろしを出版によると、研究者によっては「ㅅ」「ㅎ」を激音にする人がいるよう なので、ここでは「ㅅ」「ㅎ」も激音で扱っておきます。

　この発音の詳しい区別の仕方は、Ｃ－１をご覧ください。この「平音」「激音」「濃音」の区別は日本語母語話者にとって苦労する点ですが、韓国語ではこの３つをしっかり区別して発音しないと、違う意味で捉えられる可能性があるので、発音の区別を身につける必要があります。「ㅅ」 「ㅎ」

　平音は、ローマ字で、

　と表記されることがあります。なぜ、二つの音が書かれているかというと、「一文字だけれど、二つの音を持っている」からです。「ㄱ」は、ある条件では「k」で読み、ある条件では「g」で読むということです。 この条件についての詳しい説明はＣ－８をご覧ください。

　「平音」「激音」「濃音」のポイントは、「平音は清音、濁音２つの音を持ち」、「激音、濃音はそれぞれの発音の区別をしっかりすること」です。

また、この平音、激音、濃音とは別に、「鼻音」、「流音」というのがあります。この発音は、日本語母語話者でも区別しやすい音なので、簡単に扱われやすいですが、「ㅇ」という少し扱いが難し文字があるので注意が必要です。

鼻音は、鼻から息を出す音だから「鼻音」、流音は、舌の両側面から息が流れ音だから「流音」といいます（本来は、息が「鼻や口から流れ出る」という意味があり、広い意味では「鼻音」も含まれます。しかし、韓国語ではこの二つを区別しているので、ここでもそれに倣います。）

「ㄴ」は舌先を、上の歯の裏のあたりで弾いて発音する。

「ㅁ」は上下の唇をしっかり閉じて発音する。

という意識ができていれば、そんなに難しくなく発音できると思います。ただし、韓国人の中には、「ㄴ」を「ㄷ」のように発音してしまう人もいます。これは、「渡り音」といって、「ㄷ」に近い音で発音してしまっているので、「ㄷ」と聞こえていても、「ㄴ」を練習するときは真似せずに「ㄴ」で発音してください。「ㅁ」も同様の「渡り音」で「ㅂ」と発音する人もいますが、気にせず「ㅁ」で発音練習しましょう。

一方「ㅇ」は、「아 야 어 여 오 요 우 유」のように「母音」のみ表記するときに、添えられる「無音」と、パッチムとしての「子音」との二つの意味があります。パッチムについては別の項目で扱うことにして、ここでは、「無音」の「ㅇ」について記述しておきます。母音に添えられる「ㅇ」は、無音ですので「子音」ではありません。二つの意味があってややこしいですが、ここではとりあえず気にしないでおきましょう。（パッチムの詳しい説明はＢ－７参照）。

「ㅇ」は、母音に添えられるだけの「無音」記号としての役割と、パッチムとして発音される「ㅇ」の音の二つの意味がある。

ということだけ、おさえておきましょう。

流音「ㄹ」に関しては、いわゆる「ラ行」と同じと考えればいいのですが、「舌が短い」「小舌帯が強く残っている」などで、発音しにくい場合は、何度練習してもうまく発音できない場合があります。「ㄹ」を発音しているつもりでも、何度も「違う」と指摘を受ける場合は、身体的な問題点も考慮する必要があります。

「ㄹ」は、ラ行であるが、発音しにくい場合は、身体的な問題も考える必要がある。

もし身体的な問題が気になる方は、篠原さなえ（2018）「日本人のための声が良くなる『舌力』のつくり方　声のプロが教える正し『舌の強化法』」（ブルーバックス）を参考にされるといいかもしれません。

というわけで、発音できるようにならなければならない文字の形＝１９個「ㄱ ㄴ ㄷ ㄹ ㅁ ㅂ ㅅ ㅇ ㅈ ㅊ ㅋ ㅌ ㅍ ㅎ」＋「ㄲ ㄸ ㅃ ㅉ ㅆ」 を発音の仕方別に整理すると以下のようになります。

＜さらに＞

「調音点」

　発音の仕方で整理する時、また違う観点も存在するので紹介しておきます。韓国語の発音は、「唇を使う発音」「舌先を使う発音」「舌の後ろ部分を使う発音」の３つに大きく分けられます。これは、ハングルの文字の形の由来と大きく関わっているのですが、詳しくはＢ－２をご覧ください。

 この「唇を使う発音」「舌先を使う発音」「舌の後ろ部分を使う発音」の３つで整理する方法は、「鼻音化（Ｃ－１９）」を考える時に非常に有効で、子音を発音している時に、どこで発音しているかを感じ取れるようにしておくと、後で鼻音化を学ぶときに、スムーズに学べます。

＜もっと詳しく＞

「名称と書き方」

　子音字には、それぞれ名称があります（Ｂ－２参考）。韓国の韓国語学校で学ぶ時、先生が文字の名称を使う場合があるので、覚えておくと授業が聞きやすくなるということはあります。

　また、子音字は、書く際に注意が必要な事柄があります。

　趙義成（2008：379）「文字と発音の指導法」『韓国語教育論講座第１巻』（くろしお出版）で、次の8点を挙げていますので、書くときに参考にしてください。

・「ㅇ」の頭に点を付けていないか。

・「ㄹ」は「己」のように最後を跳ねていないか。

・「ㅅ, ㅈ , ㅊ」の最後の斜めは払わずに止めているか

・「ㅈ」を「ス」のように書かず、活字体のように「ㅈ」と書いていないか。

・「ㄱ, ㅋ」を「ㅏ, ㅐ, ㅣ」などの左に書く際に、「フ」と左に払っているか。

・「ㅅ, ㅈ, ㅊ」を「ㅗ, ㅜ, ㅡ」などの上に書く際に、子音字母の足の部分が母音の横棒からはみ出ていないか。

・「ㄴ, ㄷ, ㄹ, ㅌ, ㅍ」を「ㅏ, ㅐ, ㅣ」などの左に書く際に、下部の横棒をやや右上がりに払い気味にしてるか。

・ 母音字母に対して子音字母の大きさが大きくなりすぎなくないか。

解説動画