語尾４．【있습니다/없습니다】について学ぶ。
＜これだけは＞
（１）人と物の「ある／なし」
日本語では、
人： あそのに人が二人「います」／「いません」
物： そこに本が二冊「あります」／「ありません」
というように、人と物では「います／いません」「あります／ありません」二つの言い方になります。人に向かって「×ここに、ありなさい！」とは言いませんし、物を指して「×ここに、ラーメンがいます」とは言いません（冗談であれば言います。あと天地創造できる存在が「天よあれ！陸よあれ！」とか命令することはあります）。
じゃ、アンドロイドは「いる？ある？」、自動掃除機ルンバは「いる？ある？」、うちのお父さんは「いる？ある？」とかいろいろ疑問は出てくるんですけど、韓国語では一切そのような事は考えなくてすみます。なぜなら、人だろうと物だろうと同じ表現になるからです。韓国語では存在しているか、存在していないかの二択だけ考えれば良いのです。
存在している（あります／います）：있습니다
存在していない（ありません／いません）：없습니다
この段階ではあまり詳しく知る必要がありませんが、日本語で「ある」の丁寧な言い方が「あります」であるように「있습니다」は「あります」という「です・ます」の丁寧な言い方になります。「없습니다」も同様です。「ある／いる」という言い方は他にあるので、今回は丁寧な言い方だと思って覚えましょう。
それと、「名詞+이/가 아닙니다（～ではありません）」という文法の「아닙니다」とはしっかり区別してください。「名詞+이/가 아닙니다（～ではありません）」はあくまでも、「学生ではありません」「歌手ではありません」というように「名詞ではありません」の形で、「名詞の否定」に使う要素です。存在しないことを表したいときは、「없습니다」であって、
×学生ではありません＝학생이 없습니다
×学生がいません＝학생이 아닙니다
ではないので、注意しましょう。
（２）所持（所帯）、性格としての「ある（いる）／ない（いない）」
あなたが韓国語の教科書を購入して家の本棚においています。しかし、今現在持ち歩いていません。もちろん家にはあります。あなたが外出し、手元には教科書がない状態で「教科書持っていますか？」 と言われたら、なんと答えますか。
相手が「教科書を買って家にでもどこにでも保管しているか」という意味で、「教科書持っていますか？」と尋ねたのであれば、「はい、あります。」になるでしょうし、相手が「教科書を今現在持っていて、私に見せることができるか」という意味で「教科書を持っていますか？」と尋ねたのであれば、「いいえ、ありません。」になるでしょう。
「ある（いる）」「なし（いない）」は、「今そこに存在しているかどうか」だけでなく、「所持しているか」を問う時にも使われます。これは日本語も韓国語も一緒です。
家族が「いるか」という場合にも同じです。「兄弟がいますか？」という質問でも「いる／いない」が使われますよね。今その場にいなくても、兄弟がいるなら「いる」と答えると思います。韓国語も日本語も「家族を持つ」という表現があるように、家族は「持てるもの」らしいのですが、「所持」とするのは人権に関わる表現なので、ここではとりあえず「所帯」としておきます。韓国語も日本語も「持っている」ことについても「ある（いる）／ない（いない）」で表現できます。
他に「時間があります／時間がありません」という表現があるので、物理的に存在していないものでも「ある／ない」は使えます。また、「礼儀(예의)がない」「情(정)がない」という人の性格について言及する時にも使えます。
「ある／ない」は、人が物理的に持っているもの、心理的にもっているもの、どちらにも使える表現だということです。
＜さらに＞
「だから何なのか（用法について）」
「ありますか？（いますか？）／ありませんか？（いませんか？）」という質問で使われる場合、単純に「あるなし」を聞いていると言うことは非常に稀です。むしろ、存在や所持を確認するとは別の使われ方をします。
＜貸し借り＞
Ａ：지우개 있어요?（消しゴムありますか？）
Ｂ：네, 있어요. 빌려 드릴까요?（はい、あります。貸してあげましょうか？）
この場合、 Ａさんが、「Ｂさんの消しゴムがどんな形なのかすごく知りたい」という気持ちで質問している可能性は低いと思われます。むしろ、「消しゴムがないから、Ｂさんに借りたい。借りたいけど、まず、持っているかどうかを確認しよう」という意図で質問している可能性のほうが高いです。このような可能性は経験から身につけていく物ですけど、経験値が低いと、「はい、あります。」とだけ言って会話が終わってしまうかもしれません。幸いＢさんは、経験値が高いので、Ａさんに「貸してあげる」と提案しています。次の場合はどうでしょうか。
＜時間の確認＞
Ａ：시계가 있습니까?（時計がありますか？）
Ｂ：네, 지금 오후 3시입니다.（はい、今午後3時です）
この場合Ａさんが知りたいのは時間であって、Ｂさんが腕時計を常に着用しているか知りたがっているわけではないと思います。時間が知りたいということを察したBさんは、「あります」とは言わずに、「今午後3時です」と答えています。「あるなし」を問う質問なので、「あるなし」を単純に答えればいいかと言うとそうではない場面はいくつでもあります。
このように「ありますか」という質問は、話者の意図によって様々に解釈され得るわけです。ですから、「基礎から学ぶ韓国語講座初級第4課」では、「時間がありますか」という質問は、「私と遊ぶ時間がありますか」という意図で発せられています。
チョルス：오늘 시간 있습니까?（今日時間ありますか）
聞き手であるゆかりは、「チョルスが誘ってきている」という意図を察知して、防護壁を張ります。
ゆかり：오늘은 친구하고 약속이 있습니다.（今日は友達と約束があります）
実は、ここで発している「友達と約束があります」も「ある／なし」だけを単純に表現しているのではなく、「約束がある（から、あなたの誘いにはのれない）」という意図が含まれているわけです。
ここから、「あるなし」の次元を超えた攻防です。「있습니다/없습니다」は相手を誘ったり、断ったりすることに使えるということが分かります。「있습니다/없습니다」は、「あるから何のか」「ないから何なのか」という意図を考えながら会話する必要があるわけですね。
＜もっと詳しく＞
「存在詞」という名称
たまに日本の教材をいていると、「있다/없다」を「存在詞」と紹介していることがあります。この「存在詞」という名称は日本でしか使いません。韓国の教材や辞書には出てこない言葉です。日本の韓国語学者が作り出した名称なのですが、「あるなし」を表す語彙として区別するために便利なので、日本では広く用いられています。
日本語では「ある／いる」「ない／いない」という語彙を「語の最後の母音が『う』で終わる『ある／いる』を動詞」、「語の末尾が『い』で終わる『ない／いない』を形容詞」として区別しています。これは日本語の品詞区別のルール上そうなるというだけで、分けられるからどうだという大きな違いはないと思います（ただし、「ないです」「ありません」という否定形の使い分けは少し複雑です）。
ただ、韓国語の「있다/없다」は動詞、形容詞どちらの振る舞いもするため、動詞と形容詞の活用が異なる韓国語ではすこし扱いがやっかいになってきます。
主に活用が異なるものを整理すると、
（１）「있다」「없다」という元来の形を動詞として扱う語尾：「現在連体形」(있는/없는)
※動詞扱いなので過去連体形（은）は付きにくいですが、「있은 후」という使い方はできます。
（２）「있다」「없다」という元来の形を形容詞として扱う語尾：「한다体（間接引用）」(있다/없다)、「～ですねの군요」(있군요/없군요)
「있다」「없다」を付けて一単語とする形容詞
맛있다（おいしい）/맛없다（おいしくない） 재미있다（おもしろくない）/재미없다（おもしろくない）
なども、（１）（２）の活用に従います。これら「있다/없다」形容詞は、語尾６-２．【있어요/없어요】で詳しく説明してあります。
つまり、맛있다は形容詞であっても現在連体形では動詞の振る舞いをして、
맛있는 요리（美味しい料理）
となり、군요を付けても
맛있군요（おいしいですね）
となります。
「存在詞」は、動詞、形容詞どちらの振る舞いもする特殊な存在なのです。