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語尾２１．【不可能表現】動詞・形容詞の「長い不可能 -지 못하다」について学ぶ。

＜これだけは＞

　（１）「短い不可能　못」と「長い不可能 -지 못하다」

　　韓国語の「できない」という不可能の表現は、「短い不可能 못」を使った方法と、「長い不可能 -지 못하다」を使った方法の二種類があります。

　　「短い不可能 못」　　　　못 갑니다（行けません）

　　「長い不可能 -지 못하다」 가지 못합니다（行けません）

　基本的に「短い不可能 못」は動詞にしか使えませんが、「長い不可能 -지 못하다」は、形容詞にも使えるという使い方の違いがあります。「短い不可能 못」については、「語尾２０．[不可能表現]」動詞の「短い不可能 못」について学ぶ」をご覧ください。ここでは、「 長い否定　-지 않다」を主に扱います。

　　（２）動詞・形容詞の「長い 不可能　-지 못하다」の意味と形

　「長い不可能 -지 못하다」は、「できない」という意味以外に「〇〇するのに状態が十分でない」「〇〇に及ばない」というニュアンスが含まれています。動詞と一緒に使われる時は「短い不可能 못」と意味はほとんど変わりませんが、形容詞と一緒に使われるときは、「〇〇するのに状態が十分でない」「〇〇に及ばない」という意味がより強く表れます。

主に「長い不可能 -지 못하다」はパッチムあるなし関係なく「動詞の語幹の後ろ」に置くことで「不可能の意味」を表現できます。

主に「長い不可能 -지 못하다」はパッチムあるなし関係なく「形容詞の後ろ」に置くことで「状態が十分でない」「及ばない」を表現できます。「短い否定　안」「長い否定 -지 않다」で否定するよりも、「〇〇というには及ばない／十分でない」という意味を込めることができます。

形容詞の場合全てと結合できるのではなく、「하다形容詞」や「一部の形容詞」に限られます。特に、「멀다（遠い）」「비싸다(値段が高い）」のように、否定のニュアンスがある形容詞には使いにくいです。

　長い否定の場合、動詞・形容詞の語幹に「지」が付き、その後ろに「못하다」が付きます。書く時は、「지」を動詞・形容詞の語幹とくっ付けて書き、その後ろの「못하다」は、離してかきます。「動詞 ・形容詞+지」までが一括り、「못하다」が一括りとなっています。

（３）「長い不可能　못」の意味

　動詞と一緒に使われる「長い不可能　-지 못하다」は、 「短い不可能　못」とほぼ意味が一緒なので、「する能力はあるが『諸事情によってできない』『苦手だ、気持ちが乗らなくてできない』『十分にできると言えるほどの自信がない』というニュアンスを表すことに使えます。その場合、何かしら理由や原因、条件と一緒に述べることが多いです。

・저는 병 때문에 가지 못해요.（私は病気のせいで海外に行けません。）←身体的な問題のせいで行けない

・부모님이 반대해서 가지 못해요.（両親が反対していて行けません。）←家族とのの問題のせいで行けない

・돈이 없어서 한국에 가지 못해요.（お金が無くて韓国に行けません。）←経済的な問題のせいで行けない

・그 사람이 참석한다면 저는 가지 못해요.（その人が参加するなら私は行けません。）←心理的な問題があるので行けない

　さらに、「못」は、「しようと思っているが、まだできていない」という意志を表すことができるため、「まだ～していない」という使い方ができます。

Ａ：개봉 중인 그 영화 봤어요?（上映中のあの映画見た？）

Ｂ：아직 보지 못했어요.（まだ見ていません。）

Ａ：방탄소년단의 새로 나온 앨범 들었어요?（防弾少年団の新しく出たアルバム聞きましたか？）

Ｂ：아직 듣지 못했어요.（まだ聞いていないです。）

もしここで、それぞれ「보지 않았어요（見ませんでした）」「듣지 않았어요（聞きませんでした）」と言うと、「上映中であっても見る気がない」「聞ける機会があっても聞く気がない」というニュアンスで伝わってしまう可能性があります。「興味があるけど、まだ～していない」ということを言いたいなら、「-지 않다」ではなく、「-지 못하다」で答えるようにしましょう。

＜さらに＞

（４）「長い否定 -지 못하다」に付く助詞

　「長い不可能 -지 못하다」の「지」の後ろには、様々な助詞を付けることができます。

　・어제 드라마를 보지를 못했어요.（ 昨日ドラマを見られませんでした。）

  ・시간이 없어서 제대로 보지는 못했어요.（時間がなくて、しっかり見られはしませんでした。）

　・시간이 없어서 아예 보지도 못했어요.（ 時間がなくて、てんで見ることもできませんでした。）

　助詞が付くことで、ただ単純な不可能というよりも、何か含みを持った表現になります。「를」を使うとより強調されたニュアンスになります。「는」は「～ではないが～ ならできた」、「도」は、「～することすらできなかった」という含みを持たせることができます。

（５）「長い不可能 지 않다」 は「苦手だ／下手だ」という意味が薄い

　「長い不可能 -지 못하다」は、「苦手だ」「下手でできない」という意味をもった単語「못하다（下手だ）」が使われているので、「苦手だ」「下手でできない」という意味が強いかというと、そうではありません。

　　例1．공부(를) 못하다（勉強が苦手だ）

　　例2. 운동(을) 못하다（野球が苦手だ）

　「苦手だ」「下手でできない」として「못하다（下手だ）」が使える文を「長い不可能 -지 못하다」で置き換えると、むしろ『諸事情によってできない』『十分にできると言えるほどの自信がない』というニュアンスの方が強くなります。

　　例3．공부(를) 하지 못하다（（何かしらの理由で）勉強ができない）

　　例4. 운동(을) 하지 못하다（（何かしらの理由で）野球ができない）

　　これは、「長い不可能 -지 못하다」だと「短い不可能 못」に比べて、『苦手だ、気持ちが乗らなくてできない』という意味が薄れてしまうからだと考えらえます。「お酒が飲める（上戸）か、お酒が飲めないか（下戸）か」という問いに対して「短い否定 못」で返答できますが、「長い否定 -지 못하다」では、少しぎこちない感じがします。

　　　Ａ：술 잘해요?（お酒得意ですか？＝飲めますか？）

　　◎Ｂ：술 못해요.（お酒は苦手です＝飲めません。）

　　　Ａ’：술 잘해요?（お酒得意ですか？＝飲めますか？）

　　△Ｂ’：술 하지 못해요.（お酒できません。）

「お酒が飲める（上戸）か、お酒が飲めないか（下戸）か」という問いに対して、「하다」ではなく「마시다（飲む）」という動詞を使った場合、より異なる意味合いが強くなります。

　　　Ａ”：술 잘해요?（お酒得意ですか？＝飲めますか？）

　　　Ｂ”：술 못 마셔요.（お酒は苦手で飲めません≒苦手です）

　　　Ａ”’：술 잘해요?（お酒得意ですか？＝飲めますか？）

　　　Ｂ”’：술 마시지 못해요.（お酒を飲むことができません＝酒が好きか嫌いか以前に「酒を飲む」ということができない）

「못 마셔요」だと、『苦手だ、気持ちが乗らなくてできない』というニュアンスを含めますが、「마시지 못해요」だと、「好きか嫌いか」「得意か苦手か」という以前に、「体質的に受け付けない」「病気や宗教などの理由で飲んでは行けないので飲めない」という「できる／できない」という対立のニュアンスが強くなります。

　ですから「長い不可能 -지 못하다」は語彙によっては、「理由はいろいろだが、とりあえず『できるかどうかと問われたら、できない』」という返答をする時に使い、「短い不可能　못」は「苦手だから、下手だからできない」という返答をする時に使うという使い分けが必要な場合があります。

＜もっと詳しく＞

（６）「短い不可能 못」と「長い不可能 -지 못하다」を厳密に区別するのは難しい

　といっても、「長い不可能 -지 못하다」と「短い不可能　못」は厳密には使い分けが非常に難しく、動詞のみに付くか、形容詞にも付くのか以外は、「〇〇の場合は「長い不可能 -지 못하다」」「〇〇の場合は「短い不可能　못」という区別は厳密にはできません。

　よく書き言葉では、「長い不可能 -지 못하다」で使われ、話ことばでは「短い不可能　못」が使われるという説明を見ますが、 「長い不可能 -지 못하다」が多く見受けられる理由は「語尾２０．【不可能表現】動詞の「短い不可能　못」の（８）」で述べた理由のためだと思われます。

「する能力はあるが『諸事情によってできない』『十分にできると言えるほどの自信がない』といういみであれば、どちらも書き言葉、話し言葉の分け隔てなく、よく使われているはずです。

（７）「短い不可能 못」も「長い不可能 -지 못하다」も推量の「-겠-」と共に使われることが多い

　「長い不可能 -지 못하다」と「短い不可能　못」は、「(으)ㄹ 수 없다」という「できない」という事実を伝える文法と異なり、「できることはできるが『諸事情によってできない』『十分にできると言えるほどの自信がない』」ということを伝える文法です。

　そのため、「あー、したいのにできない」「できるというにはほどとおい、くやしい」「するのが恥ずかしくて、できない」というニュアンスを強めるために、主語が自分の時（主語が自分だと、主語が省略されることが多い）、意志・推量を表す「-겠-」と共に使われることが非常に多いです。

　　・제시간에 못 가겠어요!/제시간에 가지 못하겠어요! (（私は）時間まで行けない！／行けそうにない！)

　　・전 남친을 못 잊겠어요./전 남친을 잊지 못하겠어요.（（私は）元彼が忘れられないです／忘れられそうにない）

　　・창피해서 말 못 하겠요./창피해서 말하지 못하겠어요.（（私は）恥ずかしくて言えません／言えそうにない）

　この時の意志・推量を表す「겠」は、「自分はできそうにない」「諸事情を到底解決できないので、できそうにない」という自信のなさを強調するのに使われます。また、「長い不可能 -지 못하다」と「短い不可能　못」は「しようとしている意志」がニュアンスに含まれるので、「しようとはしているんだ」という意志が「겠」によって増幅されます。

　一方、「(으)ㄹ 수 없다」は「できない」事実を述べるだけで、「しようとしている意志」がニュアンスに含まれていないため、主語を「自分」にして、「-겠-」をつけつことが難しくなります。

　　？제시간에 갈 수 없겠어요! (（私は）時間まで行けないでしょう)←なにか他人事のように感じる

　　？전 남친을 잊을 수 없겠어요.（（私は）元彼が忘れられないでしょう）←なにか他人事のように感じる

　　？창피해서 말할 수 없겠어요.（（私は）恥ずかしくて言えないでしょう）←なにか他人事のように感じる

主語を「自分以外」であれば、「(으)ㄹ 수 없다」に「-겠-」をつけて、「推量」としてのニュアンスを持たせることができます。

　　・이러면 제시간에 갈 수 없겠어요! (このままだと、（あなたは）時間まで行けないでしょう)

　　・민수는 전 여친을 너무 좋아했으니 전 여친을 잊을 수 없겠어요.（ミンスはとても元カノが好きだったから、元カノが忘れられないでしょうね）

　　・창피해서 말할 수 없겠어요.（恥ずかしくて（あなたは）言えないでしょうね）