F－８．指示代名詞について整理する
＜これだけは＞指示代名詞とは
指示代名詞とは、日本語でいうところの「이(こ)、그(そ)、저(あ)」（連体詞：韓国語では指示冠形詞という）に名詞がついて一つの語となっているものを指します。
例えば、
이것（これ） 그것（それ） 저것（あれ）です。また、場所を表す 이곳（ここ） 그곳（そこ） 저곳（あそこ）などもそうです。
「이(こ)、그(そ)、저(あ)」がくっついているわけですが、「것（もの）」と「이」を離して書くことはしません。これは、「이것」を「一語」としてカウントするからです。このように「이(こ)、그(そ)、저(あ)」とつっくいて「一語」を作る名詞は他にも「쪽（方向）」「분（方：人表すこの方、あの方）」があります。
×것이 좋으니까 잘 팔린다（× 物がいいからよく売れる）
×곳이 다르면 음식의 맛도 달라진다.（× ところが変われば、食べ物の味も変わる）
×쪽을 바꾸다 （× 方向を変える）
のように、単独で使える語ではなく、「이(こ)、그(そ)、저(あ)」といった連体詞や、動詞・形容詞の連体形と共に使われます。
〇 이것은 무엇입니까?（これは何ですか？）
〇 이곳에서 쉽시다（ここでやすみましょう）
〇 이쪽으로 오십시오（こちらにいらしてください）
ただし場所を表す語に、여기（ここ）, 거기（そこ）, 저기（あそこ）というものもあり、この場合は、「기」というものに深い意味はなく、
「여기」「거기」「저기」一語まるままで意味を成すものです。
基本的に指示代名詞は、「이, 그, 저」と何がつくかという覚え方より、「まる暗記」してしまったほうが早いかもしれません。
| 이（こ） | 그（そ） | 저（あ） | |
| 것（もの） | 이것（これ） | 그것（それ） | 저것（あれ） |
| 곳（所） | 이곳（ここ） | 그곳（そこ） | 저곳（あそこ） |
| 쪽（方向） | 이쪽（こちら） | 그쪽（そちら） | 저쪽（あちら） |
| 분（かた） | 이분（この方） | 그분（その方） | 저분（あの方） |
| ※ここ、そこ、あそこ | 여기（ここ） | 거기（そこ） | 저기（あちら） |
この指示代名詞をすると、「どれ」「どこ」「どちら」という語も一緒に覚えたくなると思います。
どれ：어느 것
どこ：어느 곳（「どこ」は、疑問詞「어디」で使うのが一般的）
どのかた（どちら）：어느 분（「誰」としてもいいが、「어느 분」は敬語なので、敬語として使用する時は「어느 분」、敬語で言わない時は「누구」を使う）
どちら：어느 쪽
ただし、これは「一語」とカウントせず、「어느（どの）」という連体詞（韓国語では冠形詞）が依存名詞「것, 곳, 쪽」に接続して作る語なので、「二語」として数え、分かち書きします（離して書きます）。
この「어느（どの）」は、「どの」という意味なので、指示代名詞以外にも「어느 나라（どの国）」のようにも使えます。
ちなみに、この「이, 그, 저」は、「것, 곳, 분, 쪽」以外にも使えます。その時は「一語」とみなさないで「어느」と同じように「二語」でカウントし、
| 이（この） | 그（その） | 저（あの） | |
| 사람（人） | 이 사람（この人） | 그 사람（その人） | 저 사람（あの人） |
| 커피（コーヒー） | 이 커피（このコーヒー） | 그 커피（そのコーヒー） | 저 커피（あのコーヒー） |
| 카메라（カメラ） | 이 카메라（このカメラ） | 그 카메라（そのカメラ） | 저 카메라（あのカメラ） |
というような使い方ができます。
また、形容詞「이렇다（このようだ）」「그렇다（そのようだ）」「저렇다（あのようだ）」は副詞形でよく使われ、
이렇게（このように）、그렇게（そのように）、저렇게（あのように）
としてよく見かけます。また連体形でも使われます。
이런 것（あのようなもの） 그런 것（そのようなもの） 저런 것（あのようなもの）
＜さらに＞이, 그, 저が指し示す範囲
基本的に「이, 그, 저」は、日本語の「この、その、あの」なわけですから、使い方はほとんど変わりません。ただ、相手と向かい合って話すか、相手と同じ方向を見てある対象物を差示して話すか、または、指し示す対象が話している空間にはないけれど「頭の中で想像して」『あれってどうなった？』と話すのかで、日韓に微妙なずれが生じます。
（１）相手と向かい合っている場合
この図では、カメラは話し手のすぐ近くにあります。聞き手の手元には、パソコンがあります。
この対面した状態では次のような会話ができます。
Ａ：이 카메라 너무 비싸（このカメラすごく高い）
그 컴퓨터는 얼마야？（そのパソコンはいくら？）
話し手Ａの手元にあるものは、「이（この）」で、すぐ理解できると思います。そして、聞き手Ｂの側は少し距離があるので、「이（この）」は使えず、「그（その）」になるのも日本語と変わりないと思います。もし、ＢがＡの質問に答えるとしたら
Ｂ：이 컴퓨터는 50만원이야.（このパソコンは50万ウォンだよ）
と、手元のパソコンを「이（この）」と表現することも問題ないでしょう。
向かい合っている時、かなり遠いものを指し示す時
「저것은 무엇입니까?（あれは何ですか）」
と、「저（あれ）」を使うのも日本語と一緒です。
（２）二人が同じ方向を向いて、遠くのものを指し示す
しかし、もし、この二人が向かい合っているのではなく、同じ方向を向いていたらどうでしょうか
テレビは、ＡからもＢからも遠いので、
Ａ：저 텔레비전 보세요.（あのテレビ見てください）
Ｂ：저거요？（あれですか？）
というように、「저(あの)」「저거(あれ)」と指し示すことになります。日本語も韓国語もこの点は同じだと思います。しかし私たちが見て手前にあるCDプレーヤーはどうでしょうか。
日本語ならＡが「それ」「そのCDプレーヤー」と言っても差し支えないようなきがします。しかし韓国語では「向かい合って話している場合以外」「それ」は使えません。
× Ａ：그 CD플레이어 보세요.（そのCDプレーヤー見てください）
〇Ａ：저 CD플레이어 보세요.（あのCDプレーヤー見てください）
韓国語では、同じ方向を見ている場合は「저（あれ）」を使います。
ですから、タクシーに乗って、運転手と同じ方向を見ている場合、「そこにとめてください」ではなく、
× 거기서 세워 주세요. （そこで止めてください）
〇 저기서 세워 주세요.（あそこで止めてください）
「あそこで止めてください」と言わななければならないということです。同じ方向を向いていれば、二人から近ければ、「이（この）」遠ければ「저（あの）」となると覚えておきましょう。
（３）同じ方向を向いていても、向かい合っていたとしても、「ここにないもの」を指し示すとき
「向かい合っている時」「互いに同じ方向を向いている時」という場面で、「그（それ）」が使えたり使えなかったりします。しかし、この条件が適応されない場合があります。それが、「ここにないもの」を説明するときです。
例えば、ここにいないけど、噂話として登場する「彼」「彼女」がそうです。噂話ですから、話をしている二人には目に見える存在ではありません。頭の中で想像しなければならない存在です。
그는 회사원이에요（彼は会社員です）
그녀는 회사원이에요（彼女は会社員です）
このような「ここにないもの」「見えないひと」を指し示す時、「그」を使うわけです。これは、「彼」「彼女」以外の時も一緒です。
그 사람은 회사원이에요（その人は会社員です）
これは一見日本語と同じように感じますが、実は少し違う使い方をしなければならない時もあります。
Ａ：박철수 씨 지금 한국에 없어요?（パクチョルスさんは今韓国にいないの？）
Ｂ：그 사람은 일본에 유학 갔어요.（その人は日本に留学に行ったよ）
この会話は、ＡもＢも박철수を知っているはずですから、日本語では「あの人」となるはずです。しかし、韓国語では互いに知っていようと「ここにいない人」は「그」になるのです。
＜もっと詳しく＞ 「ここにないものを指し示す」「이」「저」
「ここにないものを指し示す」というのは互いに知っていることがらならば、「그（その）」を使うと上で説明しました。しかし、これも状況によっていろいろ複雑になることがあります。例えば、一緒にテレビを見ている時です。
Ａ：이 사건 아직 범인이 잡히지 않았던 거야 （この事件はまだ犯人が捕まっていなのか）。
Ｂ：실은 그 사건 말인데...（実はそう、この事件の事なんだけど、、、）
テレビなので、「見る」ことはできると思ってしまいますが、ここでは「事件」という抽象的な概念＝「見ることができない」ことを話題にしています。抽象的な概念であっても「直前まで話題にしていた」という事柄については「이」が使えます。
이 이야기는 비밀로 해 줘.（この話は秘密にしてくれ）
이 때는 어떻게 해야 할까요?（この時はどうすればいいでしょうか）
また、次のように、「まだ話題にあがっていないけど、先行して想像の中の物、人を話題に出す時」
Ａ：저 사람 왜 이러지?（あの人なんでああなんだろうか？）
Ｂ：왜 그래. 무슨 일이라도 있어?（どうしたの。なんかあったの？）
Ｂは誰の事かまだ分かっていないので、二人が共通して知っているというわけではありません。もうすでに二人の知っている人が話題に上がっていれば、「그」を使うのですが、先行して話題に出す場合は「저」になります。
さらに、「二人がもうすでに知っている話題」であっても、「저」が出現することもあります。
어떻게 저런 일이 생겨?（どうして、あんなことが起きるんだ？）
どちらかというと、この場合は「独り言に近い」感じで、相手に問いかけるというより、「なぜだ」「どうしてだ」と自問しています。このような自問に近い時は「저（あの）」が出現します。
おまけで、慣用的に使う、「マジで」「信じられない」「ちくしょう」「ちぇっ」という意味を持つ感嘆詞は、
「이런」「저런」のどちらも使えます。