F－23．(으)면  vs -다면　ときどき「았/었더니」「으니까」

（１）日本語で訳してはいけない「으면」

韓国語を勉強していると、どうしても「この日本語は韓国語で何だろう？」と考えたくなります。しかし、そもそも「日本語をもとに考えてはいけないもの」というのも存在します。とくに、どういうものかというと、「日本国内でも地方によって異なる日本語で訳せてしまうもの」です。

どういうことか？

例えば、

１）この薬を飲むと、病は治るだろう。

２）この薬を飲めば、病は治るだろう。

３）この薬を飲んだら、病は治るだろう。

という3つの文は、それぞれ下線の文法がことなります。特に３）なんかは「飲んだ」という過去形をとります。

ですが、言っていることはだいたい同じです（もちろん少し違います）。でも、日本全国を調査すると、「うちの地方では『飲んだら』を使う」「いいや、この場合うちの地方は『飲むと』を使う」という地方差が出てきます。日本国内においても、「文法の使い方が異なる」わけです。「意味はだいたい同じだけど、地方によってニュアンスが異なる」のです。

そうするとどうなるかと言うと、「日本語をもとに韓国語を考えると」、地域によって「もとの日本語が変わってくる」。つまり、日本語ネイティブの韓国語の先生が、韓国語の教材を日本語で書こうとすると、「もともとの日本語が異なってしまう」ので、普遍的な日本語解説が難しくなります。

私は「函館出身」なので、多分函館の影響を受けつつ、日本語教師もしているので、「規範的な日本語」の影響を受けているバイリンガルです。そんな私が、関西の人や九州の人へ日本語で説明すると「それ間違ってますよ」と言われてしまう可能性は高くなります。

地域性を反映した韓国語の教科書は、コストもかかるし、売れても地域に限定されるので、作りにくい。かといって、「方言」を無視して、全国の日本語話者対象に韓国語の本を書いたとしてもよけい混乱させるだけ。。。「『～すると』『～すれば』『～したら』を韓国語で何て言うの？」は、そんなジレンマを抱えているのです。

※ということは、「～したら」は過去形だから、いつでも「했으면」にすればいいやと思ってしまいますが、これは間違った考えだということです。

（２）訳してだめなら韓国語で考える

　訳していけないのであれば、どうするか？そう、最初から韓国語で考えていくしかありません。しかし、今私が解説を書いているように、「日本語で解説している」わけですから、「日本語の呪縛」からは逃れられません。そこで、専門用語になるのですが、「仮定」「確定」「反事実」という言葉を使いたいと思います。

金順玉・阪堂千津子・岩井理子(2014：47)「日本語を活かしてつかむ中級韓国語のコツ」(白水社)の知恵を借りると（知恵を借りているだけなので全く同じ解説ではありません）、

仮定は「Xが実現した場合にYが実現すること」

確定は「Xがきっかけで新しい事柄Yが起きたこと」

反事実は「『～ていたら』で置き換えられるような、事実はことなるけど、「もし」〇〇していたらと、考えられること」

になるような文です。

どういうことかというと、「仮定」は、

１）(X）薬を飲むと（薬を飲む場合には）、(Y)病が治る（ことが実現する）だろう。

２）(X) 薬を飲むなら（薬を飲む場合には）、(Y)病が治る（ことが実現する）だろう。

３）(X) 薬を飲んだら（薬を飲む場合には）、(Y)病が治る（ことが実現する）だろう。

という「そういう場合には」と置き換えられる時です。この場合は3つの日本語の文法が該当します。

「確定」とは、

４）(X)冷蔵庫を開けたら（冷蔵庫を開けたことがきっかけで）、(Y)ネズミがいた（ことが新たにわかった）。

５）(X)冷蔵庫を開けると（冷蔵庫を開けたことがきっかけで）、(Y)ネズミがいた（ことが新たにわかった）。

という「～たことがきっかけで、〇〇だとわかった」と置き換えられる時です。「冷蔵庫を開けた場合には、ネズミがいた」とできないことからも、

「仮定」でないことがわかります。さらに、この「確定」の場合、

△　６）冬のソウルに行ってみれば、意外と寒かった。

という「～れば」を使った文は不自然に感じられます。

「反事実」とは、「もし～ていたら違う結果が起きていただろう」という事です。

７）（もし）あのこと結婚していたら、幸せだっただろう。

８）（もし）あのこと結婚していれば、幸せだっただろう。

というような文です。

×９）（もし）あのこと結婚すると、幸せだっただろう。

とはできないこともポイントです。

この三つの「仮定」「確定」「反事実」を韓国語文法と対応させると次のようになります。

金順玉・阪堂千津子・岩井理子(2014：47)「日本語を活かしてつかむ中級韓国語のコツ」(白水社)を参考に例文を補足

とにかくやっかいさを感じるのは、「日本語で「～と」「～たら」「～れば」は韓国語で何か？」 と考えた時です。

ですので、この文法は「日本語に当てはめるのではなくて、「～した場合どうなるか（仮定）」、「～たことがきっかけで何が起こるか（確定）」「もし～した場合は、違うことが起きた（反事実）」という3つの観点から文法を使い分ければいいでしょう。

（３）問題は「～するなら」「～したなら」にある　～「(으)면」vs「다면」

　では、日本語の「なら」の場合にはどうなるでしょうか。この「なら」は、「～すると」「～すれば」「～だら」と並べても、大きな違いはなさそうに見えます。

　１）この薬を飲むと、病は治るよ。

　２）この薬を飲めば、病は治るよ。

　３）この薬を飲んだら、病は治るよ。

　４）この薬を飲むなら、病は治るよ。

ですから、これもやはり「日本語をもとに考える」のは避けた方がよさそうです。しかし、この「なら」はほかの3つと大きく違う点があります。

この「なら」は、「話し手の判断、希望、意志、命令などの気持ちが含まれる」文法だからです。

どういうことかと言うと、例えば「この薬を飲む」の部分を

１）、２）、３）は、「この薬を飲んだ場合、治るだろうよ」という仮定の話をしていますが、４）の「この薬を飲むなら」には、他の3つより強い判断が表れている気がしませんか？

　ただ単純に、「薬を飲む場合、起きること」を述べるのなら、

　약을 먹으면 병이 나을 거예요.

　「으면」を使いますが、話者が「薬を飲むなら治るけど、しないならダメだ（判断）、どうしてもしてほしい（意志）」などを表したいときは、

　약을 먹는다면 병이 나을 거예요.

　「다면」になります。言っていることは大体同じですが、「話者の気持ちが入るか入らないか」が大きく異なってくるということです。

  ４）한국에 가면 냉면을 드세요.

  ５）한국에 간다면 냉면을 드세요.

４）は、「韓国で冷麺を食べるかどうかはあなたに任せるけど、言った場合は食べるといいかもね」程度のニュアンスですが、５）は、「せっかく韓国に行くくらいなら、絶体冷麺を食べるべきだね」くらいのニュアンスになります。言っていることはほぼほぼ一緒ですけど、話し手の気持ちが違うわけです。「絶対行くなら」という判断を強く表す必要があるなら、

   ６）유학을 간다면 비자를 받아야 돼요.

 ×７）유학을 가면  비자를 받아야 돼요.

やはり、「다면」にしなければいけないわけです。７）だと意味が通じなくなります。

　ただ、難題があり、次のような場合は、９）のような「다면」を使った文は、あまり自然じゃないと考えられます。

   ８）한국에 가면 좋을지 어떨지는 모르겠어요.

 △９）한국에 간다면 좋을지 어떨지는 모르겠어요.

　どちらも「韓国に行くのが良いのか、どうかわからない」ということを言っているので、話者の「判断」が関連している文です。しかし、文の構造自体「～するか、どうか」という判断の構造なので、あえて話者の気持ちを文法で付け加えて「다면」にすると、「判断」が「重複しているように感じられます。

　ですので、「～ㄹ/을지 ～ㄹ/을지」という構文を使う時は、「(으)면 ～ㄹ/을지 ～ㄹ/을지」で使った方が良いと思います。

（４）「았/었으면」vs「았/었다면」

では、これが過去形になったらどうなるのか？これも非常に難しい問題です。

　１）(만약에) 그녀와 결혼했으면 행복했을 것이다.

　２）(만약에) 그녀와 결혼했다면 행복했을 것이다.

　３）(만약에) 그녀와 결혼했더라면 행복했을 것이다.

（２）で上の例文を挙げました。上の3つは「反事実」という分類をしましたが、 実はこれらはすべて、話者の気持ちを込めることができるという点で、「다면」と似ています。ただし、「았/었으면」は「希望」「願望」でも使える一方、「았/었더라면」は「後悔や残念さ」のニュアンスが強くなります。「後悔や残念さ」のニュアンスが強い文の場合「았/었더라면」は、「았/었다면」と置き換え可能です。

　しかしながら、１）、２）、３）ともに文法は違えど、同じような表現なので使いわけは非常に難しいと言えます。あえて、分類するとすれば、

＜気持ちを込めて「았/었으면」を使う用法＞

「았/었으면」を使って「希望」「願望」を表す文を作る場合は、「좋다, 하다, 싶다」などの動詞・形容詞と共に使います。

618より

　形としては、「았/었으면 좋겠다」「았/었으면 하다」「았/었으면 싶다」という形になり、

　４）빨리 유학할 수 있었으면 좋겠다.

　５）빨리 유학할 수 있었으면 한다.

　６）빨리 유학살 수 있었으면 싶다.

いずれも、「早く留学できたらいいのに」と訳すことができます。「좋다, 하다, 싶다」と共に使う時は、「反事実」を述べるというよりも、ただの「希望」「願望」を述べるニュアンスが強くなります。

＜気持ちを込めて「았/었더라면」を使う用法＞

「았/었더라면」の場合は、「反事実」の「後悔や残念さ」を表します。なので、実際に起こってしまったと仮定して、反対の事、「もし～だったら～だったのに」という気持ちを表します。

　７）(만약에) 공부를 열심히 했더라면 합격했을 거예요.

　８）(만약에) 그녀와 결혼했더라면 행복했을 것이다.

これれは、「았/었다면」に置き換えることができます。

　９）　(만약에) 공부를 열심히 했다면 합격했을 거예요.

　１０）(만약에) 그녀와 결혼했다면 행복했을 것이다.

（５）「(으)면」vs「다면」vs「았/었다면」