F－20．verb-는 것 vs verb-기
（１）「いつ使えて、いつ使えないのか」＝ 韓国語教育文法的説明
外国人を対象とした韓国語教育現場では、「多様な母語を話す学習者」を対象にするため、文法説明はあまり詳しく説明できないという制約があります。そのため、多くの韓国語学習用の文法解説は、「使い方」よりも「形式（フォーム）」に 着目した教え方をするのがほとんどです。（だからこそ、学習者は混乱します。）
例えば、「-기」ですが、多くの教科書で、
-기 때문에（～するせいで）
-기 위해（～するために）
-기 전에（～するまえに）
-기 쉽다/어렵다（～しやすい/～しにくい）
-기 편하다（～するのが楽だ）
という、「기」を含んだ 一塊の形式で提示されることがほとんどです。
今回は形容詞の詳しい説明を省きますが、形容詞の時には差がはっきりしていて、
〇 추운 것은 싫어해요（寒いのは嫌です）
は言えても、
× 춥기는 싫어해요.
は使えません。「춥다」の名詞は、「추위」と別の形になりますし、「-기」が使えるとしたら、「～ことは～だけど」のように、
〇춥기는 추운데요, 참을 만해요.（寒いことは寒いけど、我慢できますよ。）
〇춥기 때문（寒いせいで）、춥기는 커녕（寒いのはおろか）、
춥기 마련이다（寒いのが当たり前）
みたいなある程度固まった構文の時だけです。このように「形式」で覚えるというのが一番簡単です。
しかし、「-기」は確かに動詞や形容詞を名詞化する文法なので、
先生：じゃー、「하다」「가다」「보다」を「-기」の形に変えてみましょー。
とか言って、授業で「하기」「가기」「보기」という単独の形に変える練習をすることも可能です。
が、ほとんどの現場では、「-기 위해」みたいな塊で提示し、「深いか事は考えるな。この形で覚えちゃえば良いんだよ」みたいな空気を作って指導します。 それでも生徒からは、
生徒：ソンセンニム！ 「하는 것이 어렵다（することが難しい）」と「하기 어렵다（しにくい/しずらい）」の違いって何ですか？
という質問が飛んでくるので、そういう時先生は、苦肉の策で、
先生：「하기 위해」「하기 때문에」は「×하는 것 위해」「×하는 것 때문에」って使いませんよね。これはこの形しかありません。「하기 쉽다/어렵다」「하기 편하다」は、「하는 것」に変えられるけど、「하는 것이 쉽다」「하는 것이 편하다」のように助詞をしっかり使います。助詞は省略しません。
（実際の先生が韓国語で学習者に説明する時は、こんな感じでしょうか。黒板に板書しながら
〇〇 씨, 「하기 위해」「하기 때문에」는 「×하는 것 위해」「×하는 것 때문에」할 수 있어요? 할 수 없어요? 네, 할 수 없어요. 이것은 이 모습(형식)밖에 안 돼요. 「하기 쉽다/어렵다」「하기 편하다」는、「하는 것」으로 바꿀 수 있어요. 그런데「하는 것이 쉽다」「하는 것이 편하다」, 이렇게 「이/가」를 써야 돼요.）
と説明するはずです。「「기 위해」「기 때문에」「기 전」は、これはこの形でしか使わない。」「「기 쉽다/어렵다」「기 편하다」は「는 것」と置き換えられるけど、「는 것」の後ろの助詞は省略できない。」「形式（フォーム）で覚えろ」これが韓国語教育業界のセオリーです。
しかし、次のような時問題が発生します。
生徒：ソンセンニム！「음악 듣기를 좋아해요」と「음악 듣는 것을 좋아해요」の意味の違いは何ですか？
ここで先生は困ってしまいます。この違いを説明するとなると、学習者の母語を媒介した説明が求められるからです。ここが「韓国語教育文法の限界領域」です。ネットで多く見られるのは、「よくわからないけれど、違う」「韓国人は体で覚えている」みたいな説明になっていない説明ばかりです。
（２）韓国語教育を逸脱して意味論とか認知文法的説明
しかし、私と皆さんは日本語が通じるので、日本語で説明できるという利点を生かし、このまま詳しい説明を続けます。
「음악 듣기를 좋아해요」と「음악 듣는 것 좋아해요」は、ほぼ一緒の意味です。しかし、次のような時はどうでしょうか。
〇클래식 음악 듣는 것을 좋아해요.
△클래식 음악 듣기를 좋아해요.
「音楽」の前に「クラシック」を入れると、「듣기」の方が不自然になります。全く意味が通じないわけじゃないけど、「클래식 음악 듣는 것」のほうがすわりがいい。これは「武村解説」なので多分どこにも書いてない話ですが、「-기」「는 것」というのは、日本語にすると、どちらも「すること」と訳せても、「そもそもの意味が違う」ということを意味しているからだと思います。
つまり、「듣는 것을 좋아하다」というのは、「聞く行動そのものというより、聞いている空間や時間という4次元的な場面、雰囲気が好きだと言っているのに対して「-듣기를 좋아해요」は、「聞く行為そのもの」、ですから、「聞いていて楽しいなぁとか、聞いていると気分がいいなぁ」とかそういう感情一切抜きに、「行動、行為そのもの」が好きだと言っているのだと思います。
だとすると、「음악 듣기를 좋아해요」は言えないんじゃないかと思いますけど、
〇 音楽を聴く行為が好きなんですよ
は、「음악 듣는 것을 좋아해요（音楽を聴く空間時間が好き）」とはニュアンスが少し違いますが、まだ許容範囲なのかなと思います。でも、「클래식 음악 듣기를 좋아해요」は、「クラシック音楽を聴く行為自体が好きだ」という意味になるので、「クラシックを聴いている自分っていいなぁ」「ヒップホップじゃなくてクラシックを聴く「行為」が好きなんだ」みたいな感じになって、少し不自然になります。「不自然」と表現したのは、「クラシックを聴く自分に酔いしれる人」というのもいなくはないので、そういう人が「클래식 음악 듣기를 좋아해요」と言うのであれば許容範囲だという意味です。
「BTSの歌の違いがわかる自分ってすごいなぁ。BTSが好きな自分っていいなぁ」と、BTSの歌を聞く自分に酔いしれているなら、
「방탄 노래 듣기를 좋아해요」でいいですけど、普通BTSの歌を聞く「行為そのもの」が好きというより、「好きだ」という感情には、歌を聞く時間や空間という4次元的な場面、雰囲気が好きだということを含まれている確率が高いと思います。
「-기」が「行為自体」を表すというのは、例えば、言語の4技能「말하기（スピーキング）」「읽기（リーディング）」「쓰기（ライティング）」「듣기（リスニング）」という使われ方からもわかります。これらの名称には「는 것」が使用されません。あと、運動系でいうと「걷기（ウォーキング）」「달리기（ランニング）」という言い方がありますが、これらも「行為自体」の意味が強く、名称（種目）に近い使い方をされます。
種目としての「걷기」「달리」や、「読書行為」としての「책 읽기」は、「좋아하다」が使えるとして、「말하기（話すこと自体）」が好きですとは言えなさそうです。もちろん「韓国語の音律リズムが好きで韓国語で話すこと自体が好き」は言えるので、
〇 한국어로 말하기를 좋아해요.
は言えるような気がします。でも、「韓国語でおしゃべりする時間、空間の雰囲気が好き」なら、
〇 한국어로 말하는 것을 좋아해요.
が自然になります。しかし、「面白い」「楽しい」という感情がこもった発言に「기」を使ったら、
△ 한국어로 말하기가 재미있어요
なんか、「韓国語って奇妙な音を発する言語だよね～マジうける～、アンニョンってなに？アンニョン・アンニョーン」みたいな韓国語を馬鹿にした態度だと取られる確率の方が高いです。素直に韓国語で話すのが面白いよね。韓国語話すのが楽しい、というのであれば、
〇 한국으로 말하는 것이 재미있어요.
と言った方が、確実に気持ちが伝わります。
超専門的なことをいうと、動詞の連体形に接続される는の「느」には「～ている」的なニュアンスがあって、「何かをしている空間や時間という4次元的な場面、雰囲気での行動」を表します。
その意味が薄れてしまう名詞形「-기」は、「좋아해요」とそれほど相性のいい文法要素とは言えず、使われ方も限定的になってしまう。一方、「는 것」は「～している時間・空間が好き」というニュアンスが強いので、相性がいいと言えるわけです。
（３）「どんな場面で使うのか」＝韓国語を教える時必要なこと
だから、「趣味について語りましょう」回で「二つの文法を同時に出す」というのは避けた方がいいと思っています。「私の趣味は～することです」を教えるにしても、「-기를 좋아해요」「는 것을 좋아해요」を両方提示して、「同じように使える」と教えると、本人は意図していなくても「BTS 노래 듣기를 좋아해요（BTSの歌を聞く行為自体が好きです）」という文を作ってしまう可能性があります。趣味で、「-기」を導入するならば、「음악 듣기」を「독서(読書)」とか、「여행(旅行)」とか、趣味の一名称のように提示した上で、
・제 취미는 「음악 듣기」예요.
・제 취미는 독서예요.
みたいな形で、練習したほうががいいと思います。これなら、「제 치미는 음악 듣는 것이에요」という「는 것」を提示したとしても、ある程度混乱は避けられます。
私は、この二つを解説もなしに（しかも練習 もさせてません！）、ドラマを見せて、「二つの違いがあるけど、調べてみたらいいかも」と学生に放り投げているだけなので、もっとも悪い奴なのですが、弁明すると、ドラマ「이태원클라쓰」の自己紹介の場面でのセリフは、以上の説明を証明してくれる点で 好例を提示していて、
「음악 듣는 거랑 달리기 좋아해」
「音楽を聴くこと」は「-기」を使っていない一方で、「달리기」は「ランニング」という種目（名称）が好きという意味で「-기」を使っているということが発見できます。
・음악을 듣는 것을 좋아해요
・달리기를 좋아해요
専門的なことを言うと、韓国語を学ぶ人が初歩の初歩で言いたくなる趣味の話題に、鼻音化を起こす「먹는 것」「듣는 것」を使わせるのもどうかなと思うし、「-기」という制約を受けやすい文法要素を使わせるのもどうかなとは思ってしまいます。
そこで、「-기」を 練習するなら、「行動リスト」のようなものを作りながら練習するのがいいと思います。「韓国で2010年代に流行 った死ぬまでにしたいことリスト『バケツリスト（버킷리스트：この 言葉の由来はググってください）』をみんなで書いてみよう」というような活動で、
・한국어능력시험에서 만점 받기
・보모님께 잘해주기
というようなリストを作る感じです。リストアップでも「는 것」と置き換えは可能ですが、リストアップするときは「-기」が多用されるので、差異を明確化ができます。また、 類似文法「-ㅁの名詞化（받음, 줌）」がリストアップでは使用できないという点からも差異が明確化できます。（ㅁ名詞化は、 物語文における事象の羅列 、例えば「어제 학교 갔음. 그런데 모든 수없이 휴강이었음. 억울했음」のような感じで使います。あと、LINEみたいなので 友達とやり取りするときに、（教室内で先生の噂話を카톡かLINEでやりとりする時）「저 쌤 좀 봐. 매우 웃김 ㅋㅋ（あの 先生見てよ。うけるんだけどー）」みたいな感じでしょうか。大丈夫だと思いますが、授業中はこういうのやめてくださいね。）
「는 것」は、そもそもの文法要素が「 連体形」という点において、様々な活用が想定できます。しかし、「趣味を述べる練習」では避けて、ある程度自分の意見が述べられるようになった時に、「～하는 것은 어때요?（～するのはどうですか）」「쉬는 것이 좋아요（ 休むのがいいですよ）」というような、誰かに「こんな時間を持つのはどう？」とアドバイスをする場面を想定し練習するといいでしょう。この場合 は行為自体というより「～する時間を持つ」のニュアンスが強く、「△하기는 어때요?」「×쉬기가 좋아요」と置き換えが難しいという点で、差異が明確化できます。
以上私 なりの解説です。専門的な話も多く、わかりにくい部分もあったかなと思いますが、もし、（２）や（３）がわかりにくいという場合 は（１）だけでもいいので覚えておいてください。