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F－10．韓国語の語尾変化の考え方（語幹方式と語基方式）について整理する

＜これだけは＞２つの語尾変化（活用）の考え方

　韓国語の動詞・形容詞は、「活用」します。しかし、この「活用」の仕方には、日本の伝統的な朝鮮語・韓国語研究の考え方「語基方式」というものと、韓国の韓国語教育で一般的に使われる「語幹」方式という２つの考え方があります。

　（１）語幹方式

　  韓国語の動詞・形容詞は、辞書を引いてみると、全て「-다」というように、最後が「-다」で終わっています。これが基本の形になります。

　　　　가다（行く）

        하다（する）

        먹다（食べる）

        읽다（読む）

　「語幹方式」では、動詞・形容詞の辞書の形から「다」を取って残った部分、つまり、

　　　　가

        하

        먹

        읽

　を語幹と呼び、この後ろに語尾（いわゆる文法）を付けるという発想をします。「～すれば」の意味を持つ「（으）면」だったら、

　　　　가면（行けば）

        하면（すれば）

        먹으면（食べれば）

        읽으면（読めば）

　となるわけですね。でも、これだと、「不規則活用」の場合、「다」を取ってそのままつける、ということができなくなります。

　例えば、돕다（助ける）に「（으）면」を付けると、「도우면（助ければ）」になるわけですが、語幹「돕」の形も変わるし、「으」が「우」になっているわけです。

　語幹方式だと、頭の中で「『돕』のパッチム『ㅂ』がなくなって、『으』は『우』に変えて、『면』を付ける」という論理的な思考をしなくてはいけません。

　このわずらわしささを解決してくれる方法として、「語基方式」があります。

　（２）語基方式～不規則も丸暗記、I,MY,ME,MINEの法則

　一方、語基方式は、規則も不規則も「変形させた形」で丸暗記します。韓国語の活用は、大まかに3種類にわけられるので、その3種類を丸暗記してしまえというわけです。例えば、英語の勉強で人称代名詞を次のような表で覚えませんでしたか？

　私が（主格）、私の（所有格）、私を（目的格）私の物（所有代名詞）という4種類を、単語ごとに呪文のように丸暗した人も多いと思います。これと同じように、それぞれの動詞ごとに、3種類の活用をまるまる暗記してしまえという方式です。

　韓国語の3種類の活用とは、「どのように語尾に接続させるか」という観点から大まかに次のように分けられます。

以上3種類が、韓国語の動詞・形容詞の活用の全てです。簡単にまとめると「다」を取ってそのままか（第Ⅰ語基）、「으」を入れるか（第Ⅱ語基）、「아/어」を入れるか（第Ⅲ語基）の3種類です。

この「第Ⅰ語基」「第Ⅱ語基」「第Ⅲ語基」を基本動詞である「입다（着る）」と、先ほどの「돕다（助ける）」を例に考えてみましょう。

第Ⅰ語基は、「다」をとったそのままの形になります。「지만」「고」「지 못해요」は第Ⅰ語基につける語尾なので表のとおりになります。

第Ⅱ語基は、「다」をとって、「으」を挿入した形になります。「면」「니까」「ㄹ」「ㄴ」は第Ⅱ語基につける語尾なので表のようになります。

第Ⅲ語基は、「다」をとって、「아/어」を挿入した形になります。「요」「서」「야 하다」は第Ⅱ語基につける語尾なので表のようになります。

語幹とは、「다」を取ったそのままの形を指しますが、「語基」というのは、「다」を取ってそのままか（第Ⅰ語基）、「으」を入れるか（第Ⅱ語基）、「아/어」を入れるか（第Ⅲ語基）という、動詞・形容詞の「形を変えてしまった後」のものを指すのです。これを不規則で適用すると、

「I, MY, ME, MINE」のように、「どうしてそうなるか？」は考えずに、覚えられるわけです。

「입다」の「第Ⅰ語基」「第Ⅱ語基」「第Ⅲ語基」、「돕다」の「第Ⅰ語基」「第Ⅱ語基」「第Ⅲ語基」と唱えているうちに暗記できるでしょ、というのが語基方式なのです。それぞれの単語ごとの語基を暗記するので、どれが不規則で、どれが規則だという区別も必要ありません。頭の中で「『돕』のパッチム『ㅂ』がなくなって、『으』は『우』に変えて、『면』を付ける」という論理的な思考も必要ないわけです。

これが、語基方式が生み出された所以です。語幹方式との区別はできたでしょうか？

＜さらに＞とはいうものの、頭の中では語幹方式、語基方式どちらも使っている

　教材によっては語幹方式、語基方式は分かれているのですが、学ぶ側の立場から言ったら、「どっちでもいいから、覚えられればいい」というのが本音だと思います。結局、語幹方式も、語基方式も「다」を取るという作業は一緒なわけですから、考え方は似たり寄ったりです。

　私たちは、言葉（日本語母語話者なら日本語）で思考するわけですから、語基方式で丸暗記しても、

「『돕』のパッチム『ㅂ』がなくなっているぞ」とか、「『으』が『우』に変わっているぞ」と考えながら見ているかもしれません。

また、語幹方式を取ったとしても、慣れてきたら、ハンコに押したように「도우면」という形で頭の中で思い出して、そのまま書き出すとか、音の塊を発話するとか、「不規則の活用だからどう」という考えなしに、暗記した形でアウトプットすることだってあると思います。

　つまり、語幹で論理的に考えようと、語基で暗記しようと、頭の中で両方つかって身につけていっているというわけです。

　語幹方式、語基方式の違いは、「どちらから先に接するか」の違いでしかないと思います。

＜もっと詳しく＞　活用を音で覚える方法

　たくさん聞いて覚えた人の中には、不規則活用、例えば、「들어요（聞きます）」を、これが不規則だとか思うことなく、聞いたまま覚えた人もいるかもしれません。こういう人の特徴は、「語基方式」で覚えた人と似ていますが、「『듣다（聞く）』の第3語基が『들어』で、その後ろに『요』がつく」と覚えたわけではないので、「それじゃあ、『聞かなければならない』って韓国語で何て言う？『야 하다』を付ければいいんだよ」と言っても、順調に「들어야 하다」の形にできるわけではありません。「聞きます」が「들어요」という形というのは知っていても、それが第Ⅲ語基であることは知らないし、一般に「해요体」と呼ばれていることもしらないと思います。

　「活用された形」を、語幹方式や語基方式といった文法を体系的を理解してではなく、「聞いたまま覚える」ことは可能です。ただし、応用ができなくなってしまう恐れはあります。「文法はめんどくさいし、覚えられないから、聞いて覚えればいい」という人がいますが、韓国語は「活用」がある以上、語幹方式なり、語基方式なり、「どちらかといえば理解しやすい」方法を選んで、体系的に覚えてください。

　もちろん、「聞いたまま言ってみる」とか、「聞いたことを頭にたくさんため込む」ということは大事です。しかし、活用は方法さえわかれば、新しく覚えた単語の活用形をルールに当てはめて自分で作り出すことができます。「聞いたまま覚える」となると、活用した形を全部聞かなければならないし、効率が悪いです。「いや、全部聞けばいいんだから、CDをたくさん聞けば覚える」という人も中にはいるかもしれませんが、CDを60分聞いてもせいぜい覚えられるのは10パターンくらいじゃないでしょうか。

　語基方式であれば、60分間書いて覚えれば、10パターン以上、もしくは30パターンくらいを覚えられるかもしれません。聞いて覚え、文法を体系的に覚え、そして使ってみる。そのような練習をたくさん繰り返せば、覚える時間も節約できるはずです。

※確かに「赤ちゃん」や「幼児」は、「聞いて」、その聞いた文を頭の中で文法解析し、「これはこういうルールなんだな」「あ、これは共通点があるぞ」「あれ？これは不規則っぽいぞ」とか、脳が働いて「聞いて文法を覚え」ます。しかし、よく考えてください。この文章を読んでいる時点で、あなたは「赤ちゃん」でも、「幼児」でもないはずです。後退ではなく、本当に「赤ちゃんに戻れる」というなら別ですが、赤ちゃんじゃないいい大人が「赤ちゃんのように、聞いて覚えればいい」と言うのは、意味がないと気づいたほうがいいと思います。