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F－1．日本語と韓国語の「品詞」について整理する

＜これだけは＞品詞の区別

　単語を文法的な性質の共通性に従って分類したものを「品詞」といいます（油谷,2005：89）。品詞は、単語の形、使い方、意味の三つの基準で分類することが多いですが、きれいに分類するのが難しいものもあります。日本と韓国の品詞区分は次のようになります。

日本語	韓国語	例
名詞	名詞：人の名前、物の名称、「経済」「政治」など、実在するものではないけど、「これ」とか「それ」「あれ」と置き換えられるもの。	일본, 사람, 책, 경제, 정치, 스마트폰 （日本、人、本、経済、政治、スマートフォン）
代名詞	代名詞：特定の人の名前ではなく、私、彼、わたしたちなど、文脈によって指し示す人が入れ替わるもの。	저, 그, 그녀, 우리, 저희 （私、彼、彼女、わたしたち、わたしたち）
数詞	数詞：固有数詞と漢数詞がある	일, 이, 삼, 하나, 둘, 셋 （一、二、三、ひとつ、ふたつ、みっつ）
助数詞	助数詞（名数詞）：数詞の後ろにつく単位	-개, -명, -그릇, -자루 （～個、～名、～皿、～本）
不完全名詞	不完全名詞（依存名詞）：ひさしぶりの「ぶり」、この、そのの「の」など、単独で意味をなさない名詞。助数詞もここに入る学説がある。	이것の「것」、한 김에の「김」（このの「の」、したついでの「ついで」）
動詞	動詞：一般に動きを表す単語。韓国語の「있다」は動詞に分類される。	가다, 먹다, 살다, 움직이다, 있다 （行く、食べる、住む、動く、ある）
補助動詞	補助動詞：動詞の後ろについて一つの単語のように変化させる動詞。	가 버리다の「버리다」, 놓아 두다の「두다」（行ってしまうの「しまう」、おいておくの「おく」）
形容詞	形容詞：形や色、状態、気持ちなどを表す単語。韓国語の「없다」は形容詞に分類される。また、「きれいだ」「有名だ」など日本語では形容動詞にあたる単語も韓国語ではすべて形容詞である。	예쁘다, 빨갛다, 동그랗다, 유명하다, 없다 아니다は形容詞扱い（きれいだ、赤い、丸い、有名だ、ない～ではないは形容詞扱い）
形容動詞	—
副詞	副詞：動詞・形容詞を修飾する単語。オノマトペと呼ばれる擬態語・擬声語は副詞に分類される。	아주, 무척, 얼핏, 훨씬 （とても、とても、ふと、はるかに）
接続詞	接続詞：文と文の間に入って、文同士をつなげてくれる。	그리고, 그래서, 그런데, 그러나, 그러면 （そして、それで、ところで、しかし、それでは）
感動詞	感動詞（感嘆詞）：わー、あら、など驚いたり、嘆いたり、実際人が声に出して感情を表現する時につかう語。	어머, 와, 어?（あら、わ、あれ？）
助詞	助詞：名詞について主語を表したり、目的語を表したりするもの。それだけでは意味はなく、省略されることも多い。しかし、省略してしまうと意味が通じなくなることもあるので、何でも省略できるわけではない。	은/는, 이/가, 을/를, 에, 에게, 에서 （は、が、を、に、（誰々に）、で）
接続助詞	—（連結語尾）：動詞・形容詞で作られた文節をつなぐもの。一般的に「語尾」と呼んでいる。	-고, 아/어/여서, 지만, (으)니까, -는데, -던데 （－て、－て、—だが、—から、けど、けど）
助動詞	—（終結語尾、先語末語尾）：動詞・形容詞の後ろについて文を終わらせるもの。一般的に「語尾」と呼んでいる。日本語では、「時制」は、「しまし『た』」の「た」のように、一番最後に表示するが、韓国語では、「먹었습니다」の「었」のように一番最後に来るわけではない。そのため、「先語末語尾」と呼んでいる。	先語末語尾：-았/었/였, -겠, -(으)시 　　　　　　（過去、様態・意志、尊敬）終結語尾：ㅂ니다(까), ㅂ시다, ㄹ/을게요 　　　（です・ます、ましょう、ますよ）
連体詞	連体詞（冠形詞）：名詞の前について名詞を修飾するたとえば「この人（이 사람）」の「この(이)」など。この(이)、その(그)、あの(저)は、「指示詞」とも呼ばれるが、この他にも、「여러분（みなさん）」の「여러（みな）」、「모든 사람（すべての人）」の「모든」などがある。	이, 그, 저, 무슨, 어느, 몇 （この、その、あの、なんの、どの、なん）
	存在詞（있다, 없다のことを指す。これは、日本の韓国語教本で使われる語である。だが韓国では「있다」は動詞、「없다」は形容詞に分類される。）	日本の教本での分類　있다, 없다
	指定詞（韓国語教育分野では이다動詞と呼ぶことが多い。日本語でいう「である」であるが、動詞と同じような活用をするために、「이다動詞」と呼ばれている。一方で韓国の国語では、「叙述格助詞」という格助詞に分類される。）	韓国の分類　이다

※（　）の名称は韓国での呼び方。

※韓国語に「形容動詞」はない。

※「存在詞」「指定詞」は韓国語にしかない。韓国で「指定詞」は「이다動詞」とよび、「指定詞」という呼び方は日本での呼び方。

※いわゆる語尾を日本語では、接辞助詞（しながらの「ながら」、したりの「たり」）、助動詞（しないの「ない」、するそうだの「そうだ」など）といっています。語尾は、動詞・形容詞・存在詞・指定詞の後ろについて使われる要素で、「하면서（しながら）」の「면서」や、「해서」の「아/어/여서」の部分が接続助詞、文末に来る肯定の叙述「ㅂ니다」、依頼の「ㅂ시오」などを語末語尾と呼んでいる。過去を表す「았/었/였」、尊敬の意を表す「(으)시」、様態・意志を表す「-겠」など、語末語尾の前に入る文法要素は先語末語尾と呼ぶ。

　「日本語と韓国語が似ている」ということをよく聞きますが、品詞の分類も似ています。「韓国語を学ぶ」時に、「日本語の数詞ではこういうけど、韓国語ではどういうのかな」、「韓国語にも同じものがあるのかな」と考えながら学ぶと、頭の中が整理できるかもしれません。

　ただ、日本語と韓国語で呼び方は一緒でも異なる意味を持つものや、呼び方自体が独特なものもありますので、韓国語を勉強する時は、日本語と比較しつつも完全一致しないことを念頭に入れておきましょう。

　語尾については、接続語尾、先語末語尾、終結語尾という種類はあっても、「語尾」であることには変わりないので、一括りに「語尾」としてもいいでしょう。語尾の覚え方としては、「単語のように覚えるのではなく、動詞や形容詞とつないぐ練習をしながら」覚えてください。語尾を単語としてあたまに入れると、発話する時にぎこちなさが残ります。

　また、名詞は「ショッピングで使う単語」「教室で使う単語」「空港で使う単語」のようにテーマに分けて覚えると覚えやすいでしょう。「何個」「何人」「何時」と数える時の「助数詞」は、個別に覚えるのではなく、数字とセットで覚えるなど、工夫して覚えてください。

　いわゆる疑問詞などは、「なに、いつ」が代名詞、「なぜ」は副詞として扱われるなど、正式な品詞で覚えるのではなく、「疑問詞」として一括りで覚えたほうが早いかもしれません。

　副詞は例文がたくさん載っているものを読んだり、自分で例文を作ったりして、「文脈の中で」覚えるようにしましょう。

＜チャレンジ１＞

　自分で作った会話文や教科書の会話文を見て、出てきた単語がどの品詞になるか、仕分けをしてみましょう。会話文に出てこなかった品詞については、色を変えて自分で調べて埋めてみましょう。

＜さらに＞活用するものと、活用しないもの

　「日本語と韓国語が似ている」ということは、「活用」があります。「活用」というと中学校の時に習う「五段活用」「上一段活用」「サ行変則活用」などを思い出すと思いますが、韓国語でも同じような活用が起きます。基本的に「活用」とは、動詞・形容詞にしか起こりません。韓国語には一部の数詞「하나」「둘」「셋」「넷」「스물」に単位がつくとき、「한」「두」「세」「네」「스무」と形が変わったり、合成語などで、「바다（海）」と「가（辺）」がくっついて「바닷가」というように「ㅅ（これを間に入るㅅという意味で「사이시옷」と呼ぶ）」が挿入される場合がありますが、全ての名詞に起こるわけではないので、「活用する」という意識は持たなくてもいいと思います。

　とにかく、「活用」を意識して覚えなければならないのは、「動詞」と「形容詞」です。この二つの品詞は、同じように活用する場合もあったり、動詞と形容詞で異なる活用の仕方をする場合もあります。さらには、不規則があったり、不規則の中でもまた不規則があったり、品詞ごと、単語ごとにルールを覚える必要があります。

　早い段階で動詞・形容詞の活用を覚えておいた方が、後々の学びに役立ちますが、どうしても覚えることが多いと感じる人は、まず活用を意識しないで学びを進めましょう。

　それで、この活用が「なぜ必要なのか」という話ですが、韓国語の動詞・形容詞は「辞書で引いたそのままの形」では、会話で使えないからです。いくら辞書の動詞・形容詞を覚えても、「会話では使えません」。どういうことかというと、日本語で「行く」を辞書を引くと、

　　行く（動詞）－向こうに移動する。歩く

と言うように、「行く」という形で出てきます。このままの形で、

　　明日どこ「行く」？

と友達に対して発話してもコミュニケーションができます。しかし、韓国語で同じように、「行く」を引くと

　　가다(動詞)　

という形で出てきます。でもこれを、

　　내일 어디 「가다」?

　　明日どこ

のように、そのままの形で使うことはできません。必ず活用（形を変える）させなければなりません。どのように活用させるかは、「行く？」「行きますか？」「行こうか？」「行きたい？」という、語尾が何になるかによって、活用の方法が変わってきます。詳しいことはここでは省きますが、活用させないままで何か言おうとするとコミュニケーションできませんよ、ということは理解してください。

＜チャレンジ２＞

　動詞・形容詞は、他の品詞と違い二つの間で「ある共通点」があります。動詞・形容詞をある程度挙げて、共通点を探してください。　

＜もっと詳しく＞　疑問詞

　上でも述べましたが、疑問詞は、「なに、どこ」など依存名詞に分類されたり、「なぜ」のように副詞に分類されることがあります。これらは、依存名詞だ、副詞だ、とわざわざ分類する必要はありませんが、「疑問文とよく使われるもの」として、一つのカテゴリーで分類していた方が整理しやすいです。

　いつ（언제）、どこ（어디）、だれ（누구）、なに（무엇）、なぜ（왜）、

　しかし、なん時の何は、「몇」になります。そして、日本語で「なにじん（何人）」のような言い方がありますが、韓国語では、「どの国の人」という表現を使うので、この場合は「어느 나라 사람」のように「어느（どの）」を使うことになります。

　「何曜日」の何は「무슨（なんの）」を使って、「무슨 요일」と表現します。たまに韓国語ネイティブで、「몇 요일」と表現する人もいますが、これはホナム地方の方言です。ソウル方言では、「무슨 요일」と言います。

＜チャレンジ３＞

　「どちら（どっち）、どの方、なんの歌」という表現は韓国語でどうなるか調べてみましょう。