Ｃ－１３．ㅎの弱化について整理する。
＜これだけは＞
＊ここで、[ ]という鍵括弧が使われていますが、この括弧は［発音どおりだと、このように書きますよ］という印です。
また、＜ ＞という鍵括弧で括った文字は「書く時はこう書いてくださいね」という印です。
二つの括弧の区別をしながら読んでください。
（１） 「ㅎの弱化とは」
「ㅎの弱化」とは、「ㅎ」を読まなくなる現象のことです。標準語のルールではないけれど、習慣的に発音ルールになっているものです。例えば、人名に多いですけれど、＜준호＞という名前であれば、[주노]と発音しまするような現象です。＜준혁＞なら[주녁]ですね。＜준호＞の「ㅎ」の音が弱くなったと考えて、[준오]、さらには連音化して[주노]となってしまうわけです。「하다」が付く動詞や形容詞でも同じようなことがおきます。＜안심하다＞（安心する）を[안시마다]と、「ㅎ」の弱化+連音化がおきます。
しかし、これは「絶対」というわけではありません。慣例的にそう発音しているだけであって、明確なルールはないのです。韓国の国語の発音ルール「標準発音法第12項解説」では、「ㅎの弱化」も「連音化」もせずに、[은][행]と読むように定めてあるからです（特に漢字語）。しかし、このルールを守る人はほぼいないので、[준호][안시마다]と発音するのが一般的です。ただ「一般的」であるだけで、これを「ㅎ弱化のルール」として厳格に見ることはできません。
このような現象は、「ㄴ, ㅁ」パッチムに「ㅎ」が後続した漢字語に多く見られます。음향（音響）, 간호（看護）,변화（変化）전화（電話）といった単語は、書いてある通り読めばいいのですが、一般的な発音は、「ㅎの弱化」が起こったうえで、「連音化」して、
＜음향＞（音響）×[으먕]
＜간호＞（看護）×[가노]
＜변화＞（変化）×[벼놔]
＜전화＞（電話）×[저놔]
というように発音されます。これを「連音化」の一種と思っている人もいるかもしれませんが、実はそうではありません。ルール自体がないからです。特に、次のような「連音化」とは思われないような、「ㅎの弱化」も見られます。しつこいようですが、これはルールではないので、一般的な現象だと思ってください。
＜평화＞（平和）×[평와]
＜안녕히＞（元気で）×[안녕히]
＜고향＞（故郷）×[고양]
＜사회＞（社会）×[사외]
「ㅇ」パッチムは基本的に、「連音化」を起こしませんので、＜전화＞（電話）＝[저놔]みたいな連音化は起こりません。しかし、たまに＜평화＞を[평와]のように発音する人がいます。＜안녕히 계세요＞＜안녕히 가세요＞（さようらな）という挨拶に至っては、教科書に「히を이と読む」と書いてあるものもあるので、「ㅎの弱化が必ず起こる」と思っている人も多いと思いますが、一応標準発音ルールでは[안녕히]という事が正しいことになっています（しかし、ネイティブはほぼ[안녕이]で発音します）。
パッチムに後続するわけでもない、＜고향＞＜사회＞も「ㅎ」が抜けやすいのですが、これもあくまで習慣であって、そう発音しなければならないというわけではありません。 「ㅎの弱化」ができないからといって、「あーだめだ」とか、「奇麗に発音できない」と思う必要はないのです。むしろ、「ㅎ」を発音しない方が標準発音から乖離しているわけですから。
（２） 「ㅎの弱化がルールになっている場合がある」
基本的には、「ㄴ, ㅁ」の後ろに「ㅎ」が来ている場合、ちゃんと発音するのがルールです。しかし、標準発音法では、「ㄹ」は例外に見ているようです。つまり、
＜철학＞（哲学）〇[처락]
＜결혼＞（結婚）〇[겨론]
＜실화＞（実話）〇[시롸]
のように、「ㄹ」に「ㅎ」が後続する場合は、「ㅎ」が消え「連音化」します。ただ、いちいちこのようなルールを覚えている人はいないので、ほとんど今は「ㅎ」を発音しない人が増えている気がします。なので、聞き取りの時には「連音化」されていることを念頭に聞き取らなければなりません。
＜さらに＞
（２） 「激音化する条件」
一般的に「ㅎの弱化」という現象は、「ㄴ, ㅁ, ㅇ, ㄹ」の後ろに「ㅎ」が来た時に起こります。他のパッチム「ㄱ、ㄷ、ㅂ、ㅈ」の後ろに「ㅎ」が来ると、激音化が起きます。これは全く別の発音変化です。詳しくは、「Ｃ－２３．「ㄱ、ㄷ、ㅂ、ㅈ」パッチムの後ろに子音「ㅎ」が来る場合の激音化」をご覧ください。
＜もっと詳しく＞
木内明著「基礎から学ぶ韓国語講座初級改訂版」P.32、長渡陽一著「韓国語の発音と抑揚トレーニング」P.129では、「ㅎの弱化」を扱っていますが、あくまでも、「一般論」であって、「標準発音法」にのっとった現象ではありません。
かといって、一般的に起こっている現象なので、身につけて損はしませんし、むしろ身につけることを推奨します。