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Ｂ－19．ハングルの「日本語表記」について整理する

＜これだけは＞

（１）まず考えること＝韓国語をカタカナで書く理由

当たり前の話ですが、日本の「仮名」は、日本語を書くために作られました。しかし、「仮名」で韓国語などの外来語を書き表すこともあります。

　例えば、「ホットク」「キムチ」みたいな感じです。

しかし、これらは「カタカナが読める人を想定して、カタカナにしている」だけです。たとえ「韓国語がわかる人」であったとしても、カタカナが読めなければ、カタカナで書いてある韓国語は、ただの絵同然です。

それに、カタカナをそのまま日本語話者が発音したとしても、韓国語話者に通じない場合のほうが多いと思います。

　例えばカタカナの「アイ　アム　ア　ヒーロー」を読んで伝えたとしても、「ちがうちがう正しい発音はこうだよ」と訂正されてしまうでしょう。つまり、カタカナ読みの英語は、「それだと伝わらない」という印象を持たれるということです。

　カタカナで外来語を書き表す理由は、「（カタカナが理解できる）日本語話者同士が、外来語を相手に伝えること」にあります。決して、「外国人に、その相手の国の言語を伝えるため」に使われているわけではありません。　

　逆に「日本語をハングルで書き表した」時も、同じようなことが言えます。

（２）日本語をハングルで書く理由

　ハングルで日本語を書き表す理由は、「（ハングルが理解できる人）韓国語話者同士が、日本語を相手に伝える」にあります。決して、「日本人に、日本語を伝えるため」に使われているわけではありません。

　たとえば、韓国内で日本語をハングルに表した文字を見かけますが、ハングルが読めない日本人にとっては何の意味もなしません。要は、ハングルが読める人（韓国語話者）向けに、「日本風のお店だよ」「雰囲気有るでしょ」という感じで、日本語をハングル表記しているだけです。

　韓国内の日本人に日本語を伝えるのであれば、仮名と漢字で表記してあれば必ず伝わります（間違った日本語でなければ）。

（３）自分の名前をハングルで書く理由＝理由がなければ名前はローマ字で書けば良い

　そう考えると、ハングルで自分の名前を書き表す理由をこう考えることができます。

　「ハングルが理解できる韓国語話者同士が、日本人の名前を相手に伝えるため」

　実はこれ、最終的に日本人の名前を最終的に伝えるのが目的ですので、アルファベットを使ってもいいわけです。実際に入国審査では、「ローマ字」で名前を書いて入国しますよね。ハングルで書くこともありますが、基本的にパスポートに書いてある「ローマ字」です。

　ということは、「韓国人に自分の名前を伝えるために、ローマ字を使ってもいい」ということになります。

　しかし、なぜ、わざわざハングルで書くのか？別に、「私は、TAKEMURAです。」と書いてもいいのではないか？と思ってしまいます。

　結論を言うと、「相手に伝わる」のであれば、これでもいいのです。日本語を書くときに、「今度HONDAが新たに開発した車は」と書いてあったとして何ら問題はありません。ただ、「ローマ字がわからないと読めない」ということはあります。あと、いきなりアルファベットが登場するので不自然だと思われるかもしれません。

　しかし、「ローマ字が読めて」「不自然さがない」というのであれば、日本語、自分の名前はハングルで書かなくてもいいのです。

＜さらに＞

　（１）それでもハングルで自分の名前が書きたいという人へ

　「日本語は、わざわざハングル表記にする必要がない」「ローマ字で書けば良い」というのが結論です。ですから、あえて、ハングルの日本語表記なんて覚えなくていい。

　それでも、「せっかく韓国語を勉強するんだから、自分の名前くらいハングルで書きたい」という人もいると思います。あと、「ローマ字が読めない人もいるし、ローマ字を読んでもらっても、正しく発音できない人もいるでしょ」と思う人もいると思います。

　私は、「せっかく韓国語を勉強しているんだから、自分の名前くらいハングルで書きたい」という思いは大切だなと思います。「ローマ字が読めない人への配慮」というのも大事です。

　しかし、「ローマ字の自分の名前を読んでもらっても、正しく発音できない人もいる」から、という理由に関しては同意できません。

　ハングルで書いたものよりローマ字で書いた日本語、名前のほうがきれいに発音してもらえるという可能性があります（もちろん、その逆もあります）。ハングルで書いたことで、本来の日本語、名前の発音とかけ離れるということもあるのです。

　（２）そもそも、ハングルで日本語、日本人の名前は書き表せられない

　例えば、ハングル（韓国語）には、「つ」「ざ」「ず・づ」「ぞ」という音がありません。

　つまり、「のぞみ」「つかさ」「かざま」「すずき」といった姓・名は正しく発音してもらえません。

　あと、長音と言われる「長くなる音」がありません。例えば、「おとうさん」「おじいさん」は発音上「おとーさん」「おじーさん」という音で発音しますが、このような長い音は全て短い音で発音されます。「おとーさん」は、「おとさん」に、「おじーさん」は「おじさん」になってしまいます。

　そうすると、「こうき」「ゆうき」という名前の人であれば、韓国人による発音は「こき」「ゆき」になってしまうわけです。韓国語に日本語と同じ「発音がない」ことが原因ですので、これはどうすることもできません。

「ローマ字が読めない韓国人への配慮」を考えたり、「せっかく韓国語を勉強しているんだから、自分の名前くらいハングルで書きたい」という思いでハングル表記をしたいという人は、この点を受け入れて書く必要があります。

　受け入れられない人は、ローマ字で書きましょう。

＜もっと詳しく＞

　ハングルで日本語を書き表せられる範囲とルール

　上でも述べましたが、ハングル（韓国語）には、「つ」「ざ」「ず・づ」「ぞ」という音がありません。そして、「長音」もありません。

　あとの日本語の音に関しては、「ん」小さい「っ」なども何とか書き表すことができます。ただし、書き方にはルールがあります。

　・ルール１．「え」の書き方＝「ㅔ」のみ使い、「ㅐ」は使わない。
　

　　日本語の名前に含まれる「え」をハングルで書き表す時、つまり「えりも」という地名をハングルで書き表したいときは、

　　「에리모」と書き「애리모」とは書きません。

　・ルール２．「お」と「を」の書き方＝「ㅗ」のみ使い「ㅓ」は使わない。

　　ハングルでは音が一緒のもの、「お」と「を」の区別をしません。どちらも「오」と表記します。「아오키（あおき）」、「소라（そら）」になり、「어」は使いません。

　・ルール３．「う」の書き方＝「ㅜ」と「ㅡ」の使い分け
　

　　日本語の名前に含まれる「う」をハングルで書き表す時、つまり「ふらの」という地名をハングルで書き表したいときは、「ふらの」＝「후라노」と書き
　

　　「흐라노」のように「으」は使いません。ただし、「す」の場合は、「すすきの」＝「스스키노」のように、「으」を使います。

 　・ルール４．「つ」「づ／ず」の書き方
　

　　ハングルでは「つ」「づ／ず」という音がないので、「つ」「づ／ず」が書けません。代わりに、それぞれ、「쓰」「즈」という音で代用します。日本語だと

　　「す」「じゅ」に近い音になるので、「つしま」が「쓰시마[スシマ]」、「いず」が「이즈[イジュ]」のような発音になってしまいます。これは韓国語に

　　「つ」「づ／ず」に近い音がないために、しかたがないことです。「×쑤」「×주」は使いません。

　・ルール５．「ざ」「ぞ」の書き方

　　ハングルでは「ざ」「ぞ」という音がないので、「ざ」「ぞ」が書けません。代わりに、それぞれ、「자」「조」という音で代用します。日本語だと「じゃ」「じょ」に　　

　　近い音になるので、「まえざわ」が「마에자와（マエジャワ）」、「のぞみ」が「노조미（ノジョミ）」のような発音になってしまいます。

　・ルール６．小さい「っ」の書き方
　

　　促音、いわゆる小さい「っ」を書きたいときは、「さっぽろ」＝「삿포로」のように、「っ」の部分を「ㅅ」に変えます。書き方には注意が必要で、

　　「っ」を一文字として書くのではなく、「さっ」で一つと考え、「さっ」＝「삿」と表記します。

　・ルール７．「わ」の書き方
　

　　「わ」は、「ㅗ」と「ㅏ」を組み合わせた字、「와」を使って書き表します。

　・ルール８．「ん」の書き方
　

　　「ん」は、「せんだい」＝「센다이」のように、「ん」の部分を「ㄴ」に変えます。書き方には注意が必要で、「ん」を一文字として書くのではなく、

　　「せん」で一つと考え、「せん」＝「센」とパッチム「ㄴ」で表記します。

　・ルール９．「か行とが行」「た行とだ行」「ば行とぱ行」「じゃ行とちゃ行」

　　韓国語では、「か行」も「が行」も同じ文字「ㄱ」を使います。これは、「た行とだ行（ㄷ）」「ば行とぱ行（ㅂ）」「じゃ行とちゃ行（ㅈ）」も同じです。

　　というのは、韓国語には、「清音と濁音の区別がない」からです。

　　韓国語には「Ｃ－８．有声音化」という発音現象があって、「ㄱ」を「か」で発音する時もあれば、「が（有声音）」で発音することがあります。詳しくは、Ｃ－８を

　　読んでほしいのですが、「가가미」のように書いた三文字の内、「最初の文字（語頭）は濁らない」けれど、「二番目以降の文字（語中）は濁る」という現象が起こりま

　　す。

　　同じ「ㄱ」を書いているのですから、同じ音（かかみ）で読めばいいのに、「가가미」と書くと、「かがみ」になるのです。「鏡（かがみ）」なら日本語の発音に近いで

　　すけど、そうじゃなくて、「たたみ」を「다다미」と書くと、「タダミ」のように発音されてしまうということです。「濁音になってほしくないのに、濁音になる」わけ

　　です。韓国語には、このように同じ文字であっても、「た」だったのが「だ」になる、「か」だったのが「が」になってしまうという現象があるので、「日本語をハン

　　グルで表す」のは不向きなのです。

　　　あえて、どうしても日本語、日本人の名前をハングルで書きたいというのであれば、この有声音化を解決しなければなりません。そこで考え出された方法が、「日本

　　　語とはちょっと違うけど、絶対に濁らない音（文字）」で代用するという方法です。

　本来、

　か行：ㄱ        が行：ㄱ

　た行：ㄷ　　　　だ行：ㄷ

　ぱ行：ㅂ　　　　ば行：ㅂ

　ちゃ行：ㅈ　　　じゃ行：ㅈ

　でいいところ、「有声音化」で濁音になってしまう部分を

　か行：ㅋ     

　た行：ㅌ　　　　

　ぱ行：ㅍ　　　　

　ちゃ行：ㅊ　　　

　で代用する方法です。

　　　本当は、「ㅋ, ㅌ, ㅍ, ㅊ」は、日本語の「か行、た行、ぱ行、ちゃ行」とは異なる発音なのですけど、「絶対に濁らない」という性質を利用して代用するのです。

　　　ですから、「たたみ」と書きたいのであれば、「다타미」と書きます。

　　　ハングルの日本語表記は、基本的にこの「９つのルール」を知ったうえで使いこなすのがベストです。この９つのルールが覚えられない人は、ローマ字で書きま

　　　しょう。

　　　覚えらえないけど、どうしてもハングル表記がしたいという人は、９つのルールを覚えずに、表から文字を拾って書く手段もあります。

　　　ただ、この方法は「覚えずに」文字を拾っていく「作業」なので、書く効率はかなり悪いです。覚えられるとして、自分の名前くらいでしょう。

　　　自分の名前だけは、ハングルで書けるようにしたいという人は、以下の五十音表から文字を拾ってください。

－仮名文字のハングル表記１－

－仮名文字のハングル表記２－

－仮名文字のハングル表記３－